タマヨリ その3
「ふふふ。駄目ですよ。あなたの実力。まだ見せてもらっていないですから。私は巫女ですが、それ以前にショーナン国民の一人なんですよ。闘うのが大好きなんです。ですので次の攻撃で最後にしましょう。私の千撃の光。捌いてみてください」
太陽の巫女が両の手を空に掲げる。
「それにしても……よくあの狼たちを撃退しましたね。その刀のおかげでしょうか。それって……なぜかその刀からは神の力を感じますが。何故あなたがその様なものをお待ちなのでしょう?」
蒼の剣は元々神の使いの武具。
それを見抜くとは。神の巫女とかいうだけのことある。
私が闇堕ちするのと同時に蒼の剣も闇に堕ちたけど、少しは神の力の痕跡みたいなものが残っているのかもしれない。
「そんなこと言っているけど私の話聞いてくれないじゃない。もう、あなたの攻撃をねじ伏せちゃった方が早いわよ」
「そんな事ないですよ。まぁ、話を聞いたとしても闇は祓わないといけませんから結果は変わらないと思いますが。あっ、準備が出来たら言ってくださいね。先ほどから魔法でしょうか?身体能力強化していますよね。ご存知かと思いますが、私のような神属性は、あなた方魔の者には相当なアドバンテージがありますから。それなりに強化しないと一瞬で蒸発しちゃいますよ。あなたにとって、私は相性最悪なんですから」
さすが神の巫女とか名乗るだけのことはある。
こっちのやっている事などお見通しという事だろうか。
だけど、何をどれくらい向上させているかはわからないはず。
あの暗殺者に狙われた時に使った『時間感覚延長』で迎撃するしかない。暗殺者の『時間停止』はインチキだったけど、私が本当の時間停止を見せてやる。
あとは時間がゆっくり流れる感覚の中で、どれだけ私が動けるかだ。身体能力を向上させる事は無限に出来るけど、私の肉体そのものが動きに耐えられない可能性がある。
あまりに速すぎると、実際の時間の中で筋肉と腱がが断裂するかもしれないし、脳がシェイクされて意識を保ってられないかもしれない。おそらく五十倍くらいの速度が限界ギリギリかもしれない。
それに、あの巫女が『千撃の光』と言っていた。
名前から察するに、千発に近い何かが飛んでくるに違いない。千発……捌けるだろうか。
やばい……だんだん自信がなくなってきた。
「でも!」
限界まで上げた身体能力を解放する。
体の周辺から魔力と闘気が噴き出した。
小さな竜巻が辺りの草を巻き込み一気に逆立つ。
「こいっ!太陽の巫女!」
自分を鼓舞し奮い立たせる。
「準備は整ったようですね。では行きますよ」