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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
第一章 魔法戦車と魔法少女
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聖母さま

 あれっ?気を失っていた?世界が逆さまなってる。違う、私が逆さまになっているんだ。

 ……って動けない。何かの瓦礫に埋もれているみたい。


 とりあえず腕を重力と反対方向に伸ばす。手探りで体の上に覆い被さっている何かの部品を取り除く。

 空が見えた。真っ青な雲一つない青空。

 ここはどこ?いままでの事は夢だったのかしら。

 それにしても何これ。カラダは怠いし、ゴミに埋もれてるし。


「重ったい。よいしょ!」


 体の覆い被っていた金属の塊やらケーブルやらを排除する。

 体を起こすと自分が土の上に倒れていた事がわかった。

 視界の左隅に誰かの足が映る。

 地面に座り込んだまま上を見上げた。

 そこには、銀色の甲冑を着込んだ女性が立っていた。胸には剣をクロスさせたエンブレムが細工されている。額当てにも同じエンブレムが施されていた。

 私と同じブロンドだけど、腰くらいまで伸びた髪がとても綺麗。羨ましい。


「あら?目が覚めました?おはようございます。」


 えっ?なんか微笑みが凄い破壊力。美人。優しい。聖母みたい……


「あっ、おはようございます聖母様」


 あぁ、考えていた事が口に出てしまった。


「あら、聖母様だなんて嬉しいわ。ありがと」


 まずい……現在の状況が全く掴めない。


「目覚めたばかりで周りの状況わからないわよね。大丈夫。まだ、そのままリラックスしていていいですからね」


「あ、ありがとうございます」


 何この人。この人の、あたたかくて優しい言葉は安心する。


「フレデリカ・クラーク!目を覚ましたなら援護しろ!いつまで寝ぼけている!」


 聞き覚えのある声がした。

 うしろを振り返る。

 そこには額から血を流している大隊長が剣を構えていた。

 その手前には、何かの残骸が山になっていた。自分が埋もれていたのも、この残骸の一部だ。

 このケーブル見た事ある。これって、いつも手首に接続している…………えっ!?

 再び残骸の山を確認する。

 これって……私が乗っていた戦車の残骸?

 でも、こんなにバラバラになって。どんな攻撃をもらえば、ここまで破壊されてしまうのか。


「あら。自分の置かれた状況が理解できましたか」


 甲冑の女性の優しい声が、再び頭上から聞こえてきた。


「大丈夫ですよ。彼の次はあなたの番ですから。あまり痛くしないように殺してあげますから安心して下さいね」


 あまりにも穏やかで優しい声に、何を言われたのかわからなかった。


「もういい!フレデリカ・クラーク!逃げろ!」


 その声と同時にダッシュする。

 この場にとどまる行為が、いかにマズイかと言う事を察する事ができた。

 大隊長が、私の身を案じてかは知らないけれど、自らを盾になって逃してくれるなんて、普段は考えられない。それくらい甲冑の女性が強敵だということだろうか……


 ドグァ!


 激痛が顔面を襲った。

 目の前の景色が歪んだ。気づいた時には、背中を地面につけて倒れていた。

 痛みで起き上がる事ができない。何か温かい液体が頬を伝って地面に流れていた。


「あらあら。そんなに慌てるからですよ。可愛い顔が鼻血で汚れてしまっていますよ」


 温かい液体の正体は鼻血のようだ。

 それにしても痛い。痛くて動けない。

 私は何にぶつかったのだろう?

 目の前には何もなかったはずだ。しかし、確かに何か硬いものにぶつかった。完全に私の方が当たり負けして、はね返えされた。

 どんな魔術の類かはわからないが、おそらくは甲冑女の力だろう。

 いづれにせよ、このままだと殺されてしまう。

 

「おい鎧女。どこを見ている。いくらなんでも油断しすぎだ。私はそんなスキを見逃さない。この我が最強の一撃で鎮め」


 あの構え方は……たしか居合術って言っていたっけ。このあいだの「閃光」って名乗っていた敵と同じ技だ。

 そうだ。忘れていた。大隊長はホークの次に強い人だったんだっけ。

 そう考えた刹那。光の帯となって、大隊長は私の視覚から消えた。






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