変わらぬ生活 その2
七年前。
私たちはアクワ王国を出た。
冒険者をやっていた時の経験を生かし、四人で各国を巡ることにしたのだ。
旅費や生活費は行商で稼いだ。
武具の店『負けん屋』から引き上げた商品と、閃光さんがストックしていた剣を『無限空間』に収納し、行く先々で臨時販売する。つまりは『出張版負けん屋』だ。
ちなみに『無限空間』というのは、私たちが存在している空間のすぐ隣に存在している場所で、別次元って言うのかな?
上手く説明できないけど。とにかく普通はその空間の壁を越える事が出来ない。だけど、私はその壁をこじ開けることができるのだ。感覚的には魔界に行く時に入口を開くみたいな感じだ。空間の隔てる壁を一刀で切り裂くイメージ。
この無限空間はどんな巨大な物体でも収納することができる。
そこに数百の武具をストックしてある。
取り出す時は、出したいものを、イメージすれば簡単に取り出せる。
私たちは冒険者をしながらも安住の地をも探していた。
移住地を決めるにあたり、絶対条件を三つ定めた。
一つはアクワ国から出る事。
二つ目は人里離れた、人が寄り付かない場所。
最後の一つは超重要。住みやすく景観がいい場所。
その三つの条件を満たす場所。
最初に候補として訪れたのは山頂近くにある高原だった。
高い標高にどっしりと構える山群。
青空に白い雲。その下に広がる広大な山脈。
せり出た岩場からの光景は大迫力だ。
暖かい季節は高原の草の上に寝転び日向ぼっこも出来る。
きっと、ゆっくりとした時間が過ぎていくのだろう。
ただ一点だけ欠点があった。
気温が低くなること。
寒いのは勘弁願いたい。
次に訪れたのは、南アクワの南部。そこからさらに南下したところに島がある。島の中心が山地になっている。
島の一番高い場所は岩が突き出した断崖絶壁になっていた。
崖の下を覗き込むと吸い込まれそうな錯覚に陥る。
海岸沿いまで降り水中を観察すると魚が泳いでいるのが見えた。もしかしてこれはお魚食べ放題では。
家を置くスペースもあるし。なかなかの好物件だ。
これまで三人には迷惑かけてばかりだ。
私が不甲斐ないばかりに、神の使いから堕とさせてしまった。
彼らが私に縛られるのは私の命が終わるまでだ。その時が来るまで、まだもう少しだけ時間がある。
それまで一緒に楽しく過ごせたらいいな。