虚無の中で
虚無感が、私の体を支配している。
もう口を動かして会話をするのも面倒くさい。
アイツは合計四発の砲撃を実行した。
最初の二発で町は壊滅に近い状態だったのに、トドメを刺すかの様にダメ押しで砲撃した。
三回目の砲撃の準備を始めた時、中止してくれる様、私は謝罪と懇願をした。しかし、その必死の行動さえも無視され、三撃目は発射される。
私は、魔力を無理矢理引き出される感覚に耐える事しか出来なかった。
全力疾走した時の様に息が切れている。呼吸を整え、ここから脱出しようと考えた。私さえいなくなれば、この兵器は無力化できるからだ。
だが、その乱れた呼吸が整うのも待ってもらえなかった。
そして四回目の砲撃が行われる。
大隊長の肩書きは伊達じゃない。
たった四発の砲撃で町のすべてを燃やし尽くした。町に隣接する森にも延焼した。おそらく数週間は燃え続ける火災となるだろう。
あれから一日、本来の作戦ポイントに到着。
情報通り敵魔道士部隊のキャンプがあった。
この魔道士部隊を指揮している人物を暗殺することが今回の作戦目的だ。
手順はいつも通り。二回の遠距離狙撃で掃討。部隊の全消滅を確認後帰還というものだ。
ただ私は、もう何も出来ない。
この拘束された状態で、ただ魔力を吸われていくだけだ。
はやくホークに会いたい……
ヴァーン!
主砲発射の音が響く。
私に出来ることはもうないし、もうどうでもいい。
早く帰って温かいお風呂に浸かりたい。でも、その前に上官に逆らった件で処分されちゃうのかな。
「ちっ、外れた……」
大隊長の呟きが聞こえた。
あぁ、ミスしたのか……
そういえば、ホークは狙撃外したの見た事ないなぁ。普段あんなだけど、やっぱり最高戦力だけあってスゴイんだなぁ。帰ったら褒めてあげよう……
ヴァーン!!
あうぅ……さっきより大出力で撃たれた。
大量の魔力を一気に抜かれる感覚が気持ち悪い。お腹の下の方から「にゅる」と何かが出て行く感じがする。
「くそっ!今度は弾かれた!どうなっている!」
……弾かれた……ってことは命中したけど破壊出来なかったって事なのかな……いままでそんな事一度もなかったけどな……
そう考えた次の瞬間、衝撃とともに目の前が真っ暗になった。