大円団? その1
「ただいまー!」
石でできた不恰好な門をくぐる。
その先の庭にはホークと二人の勇者が修行で剣を振るっていた。
「おつかれフレデリカ。それでどうだった?結果は?」
私は笑顔で親指を立てる。
それを確認した三人は「ほっ」 とした表情を浮かべた。
「大変だったんだよ。私も慣れない事だったし。説明するのに一苦労だったんだから。ぶっちゃけ、私でも知らない事が沢山あったし……あっ、これお弁当。ニーサちゃんと一緒に作ったんだ。みんなで食べましょう」
大量のサンドイッチが入ったバスケットをスパークに手渡す。私とニーサちゃんで競い合うように作ったものだ。具材のバリエーションを多様にしすぎて、大量のサンドイッチが出来上がった。まぁ、男の子もいるし、これくらい消費できるよね。
庭にシートを広げる。
わりと大きめのものを用意してきた。これだけの大きさがあれば全員がゆったり座れる。
そうしている間に、ニーサちゃんがお茶を入れてきてくれた。いつも気がきくなぁ。きっと、いいお嫁さんになると思う。旦那さんになる人が羨ましい。
「さぁ、食べて。ほんとうに沢山あるから。揚げたジャガイモもあるから好きなだけどーぞ」
皆一斉にお皿に盛り始める。
この勢いなら無駄になる事はなさそうだ。
「それより……」
青の勇者リンクが口をひらく。
「ニーサ。勉強会よくがんばりましたね。君ももう大人だし、早めに学習できてよかったですね。間違った知識は身を滅ぼしますから」
またこの子はインテリぶって。あなたも女性とお付き合いとかした事ないでしょ。
「うん!フレデリカさんが優しくしてくれたから。わたし、すごいドキドキして。身体が火照ってくるし。こんな体験初めてだったよ。フレデリカさんが上に乗ってしてくれたから……すごい分かりやすかったよ」
先程までの和やかな空気が一瞬で凍りついた。
皆の視線が私に集まっている。
「な、な、何を言ってるのニーサちゃん!私何もしてないよ!ちょっと!顔赤らめるのやめて!誤解されてるから!」
「そういえば……」
今度は叡智の聖騎士が何かを言おうと口を開く。
駄目だ!絶対にこの子に喋らせては駄目だ。
この子の話でいい方向に向かったためしがない。
「フレデリカ様の寝室から、激しい息使いと声が一晩中聞こえてきました。そういう事なのですね……なるほど」
ダメだ……何度も発言には気をつけるように言ってるのに。
これで悪意がないのだからタチが悪い。
「ちょ、ちょとニーサちゃん!ニーサちゃんからも説明してあげて!みんな誤解してるみたいだから。私何もしてないよね?ね?」
大丈夫。本人からの説明だったら、さすがに誤解も解ける。
いや……待って。そういえば……この子も天然なところあるんだった。
「あっ、ニーサちゃん待って!ゆっくり一緒に落ち着いて説明しましょう」
「えっ?はい。わかりました!こういう事は順番に説明した方がいいですよね」
ふぅ。よかった。ちゃんと理解してくれる子で助かった。
「そういえばフレデリカさん……」
えっ?どうした黄色の勇者?
「実は……わたし……フレデリカさんが初めての相手でした。私のファーストキス。恥ずかしかったけど貰ってくれて嬉しかったです!」