ダンダン団らん その1
「あっ!師匠!こんなところで何やってるんすか?また昼間から呑んでるのかと思ってたのに」
赤髪の少年の叫び声が響く。
この勇者の少年がいるという事は、もちろん残り二人もいるに違いない。
「やっと僕の声に耳を傾けてくれたのですね。我が師は心を入れ替えてくれたのです。グータラな師匠は過去のものなのです。見てください。手には剣が。きっと剣の修行をしていたのです」
青の少年の喋りは、あいも変わらず猫かぶり臭い。
というか、私たちの苦労が全然わかってない。
「あっ、お師匠……あれっ?フレデリカさん?なんでココに……やけに軽装ですね。それってお師匠の服じゃないですか。お師匠が着てるの見た事ありますよ。サイズも微妙に合ってないみたいですし……」
一番うしろから黄色の勇者が姿を見せる。
相変わらずニーサちゃんは冒険者の服装でも可愛い。
あと、言っている事も正解だ。
なかなかの洞察力。
「ニーサ。君は空気が読めないのですね。そんなの簡単じゃないですか。この状況から推理できることは……我が師とフレデリカさんは、ここ何日も一緒に暮らしていたという事ですよ。ニーサもお年頃なんだから、それくらい察しないと。そうですよねフレデリカさん?」
あ、青の勇者め……
空気を読めないのは誰だ……
「ち、違うのニーサちゃん。これには深海なみに深い事情があってね……」
何故かわからないがニーサちゃんを直視できない。
それは、私が空気を読める人間だということだ。
「……フレデリカさん。知っていますか?『違うの』って言葉から始める人は、『ほぼ』……『大体』……『ほとんど』……『全て』の人が重罪人なんですよ」
「ちょ、ちょっとニーサちゃん……」
「ねぇフレデリカさん?あなた大人の女性ですよね?知っていますよね?男と女が同じ家で一晩一緒にいると天から赤ちゃんが運ばれてくるんですよ。そうなったら、その赤ちゃんを二人で責任を持って育てなければいけないのです。どこですか?」
何を言っているの……この子は。
「ねぇニーサちゃん?『どこですか』って何か探してるのかしら……?」
「とぼけないでください!赤ちゃんに決まっているじゃないですか?隠したんでしょ?さぁ!出しなさい!……わかりました!家ですね!家の中に隠しているんですね!」
黄色の少女は家の方に走っていく。
戦闘中のマックススピードと変わらないスピードだ。