迎撃 その7
初めて腰を据えて話をする。
ナイフが飛んでこない事を祈りつつ、疑問にに思う事を言葉に……
「悪いが、質問には答えられない」
こちらが声を発する間もなく拒否される。
「ちょっと……まだ何も言ってないでしょ!少しは喋らせなさいよ。そんなんじゃ私たち、一生分かり合えないわよ」
「分かり合う必要はないと思うが。オレは社会の裏で動く者。答えられるものは、ほとんどない。好みの食べ物くらいなら答えてやってもいいが」
「そんな情報いらないわよ。あと例えば、あなたに仕事の依頼したい時は、どこに連絡取ればいいわけ?ほら。情報交換必要でしょ」
「安心しろ。お前がオレに頼る事はないと思う。力は圧倒的に上なのだろう?何よりオレに対して嫌悪感という感情を抱いている」
なんなのコイツ。とりつく島もない。
そもそも、最初の出会いが問題だ。私の事を殺す為に接触してきたわけだし。これに関して『嫌悪感』以外に抱く感情があるだろうか。あるはずがない。
「例えばの話にきまっているでしょ。私が殺しの依頼とかするわけないし。あなたは自分の事を『正義』って言うけど、それって誰にとっての正義なのよ?そんなの自分の立ち位置によって違うじゃない。正義なんて、この世に星の数くらいあるわよ」
回りくどい言い回しじゃダメだ。
ストレートに言葉にするしかない。
「もういいか?じゃあな」
苦労して止めた歩みが再び動き出す。
「ちょっと!」
「悪いが興味がない。正直、『正義』なんてものはどうでもいい。強いて言うなれば『悪』の反対が『正義』だ。オレは悪の存在を消すのみ」
「だからちょっと……って」
また逃げられた。
「はははは!フレデリカ。お前、全然相手されてないな……くっくっくっ」
「笑い事じゃない!気づいていたならフォローとかするでしょ普通」
「あいつの正義は、誰にも理解できないものなんだよ。きっと。どんな考えで動いているのかはわからないし、正しいかどうかもわからないが。剣を交えて少しだけアイツの心に触れられた気がする。少なくても自分の信念みたいなものは絶対曲げないやつだよ」
「私は全然わからないわよ」
念のため気配を探る。
もう私の魔力領域内から外に出たようだ。
そのかわり、新たな三つの気配が入ってきた。
真っ直ぐこちらに向かってくるのは、私のよく知っている気配だった。