万能戦車スカイフィッシュ(真)
「やはり凄まじい威力だ。この威力のものが量産できれば、数日で南アクワを制圧できるものを。『コレ』でないと機能しないとはな」
『コレ』とは私の事だ。この人も『タンク』の事を物として見ている。でも、今はそんな事どうでもいい。
「どうして……どうして撃ったのですか?」
よくわからない感情でカラダが震える。
私の力を使って、関係のない、大勢の人たちが死んだ。
怒りと悲しみと罪悪感で涙が溢れてくる。
もうこの感情を抑える事が出来そうもない。
「大隊長!どうして撃つ前に一言、言っていただけなかったのですか!」
「何をおかしな事を言っている。なぜ私がタンクごときに相談しなくてはいけないのか。言葉を話すことは許すとしても、意見する事は許していないのだが。それより、五分後に第二射を行う」
狂っている。私が止めなくちゃ。これ以上の、一方的な虐殺は絶対にしてはだめだ。魔法の供給を止めなくちゃ。
意識を集中する。
水道の蛇口を絞る様に、ゆっくりと魔法の放出を止めていく。
「んっ?出力が下がった?フレデリカ・クラーク、何かしたのか?」
「申し訳ないのですが、これ以上撃たせるわけにはいきません。私の方で止めさせていただきます」
もうこうなったら処罰でも何でも受けてやる。
「そうか……君の方でエネルギーを止められてしまったか。しかたない……」
「すみません大隊長。処罰は覚悟しております。本来の任務はきっちりと遂行しますので……」
あれ?何か変……魔力のコントロールがうまく……できない……
「きゃあ!」
突然、私の中の魔力が急激に吸い取られた。
はじめての衝撃に、カラダが勝手に弓なりにのけぞる。
「いやっ!とめてぇ!」
魔力の流出が止まらない。
身体から強制的に何かを抜き取られる感覚が断続的に続く。
「フレデリカ君。本当は、君には使ってはいけない処置なんだが仕方ない。君が動力の供給を切るから悪いのだ。君を……正確には君の力を失う事は許されない。君を無事に本国へ持って帰る事は最優先事項なのだよ。こんなところで動けなくなったら、君の命が危ないからな」
「ううっ……な……何を……」
「君はほんとうに平和で気楽な思考をしているな。いや……知らされていないのだから仕方ないのか」
「何の話……なの……」
「君は知らなくていい事だ。気にしなくていい」
「教えて……『私には使っていけない』って事は、他の子達にはしてるっていうことでしょ」
「私としたことが失言してしまった。君の言う通りだよ。ホーク・バーナー司令と君の様に仲良しごっこで戦争してるのは他には誰もいないのだよ。タンクは所詮、機械を動かす燃料だ。他のタンク共は、魔力を強制的に吸い出されているんだよ。今の君の様にね」
「あうっ……なん……」
「どうした?もう話す余裕もないのか?では、遠慮なく二発目を撃たせてもらう。君の魔力容量は相当あるらしいな。実質使い放題だな」
「お願……やめ……て」
ああ、だめだ。止めれない。
誰か……いますぐ私の事を殺してほしい。
「あうっ!」
大量の魔力を一気に持っていかれた。
頭上で主砲が発射される音と衝撃を体に感じる。
同時にモニターに映し出される爆発。
町が見えなくなるくらいの爆炎が立ちのぼっていた。
ごめんなさい……ごめんなさい……
涙が止まらない。
私は心の中で何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した。