迎撃 その5
何かまずい!
もし本当に時を止められたら何もできない。
時間がない。
「時間感覚延長……」
魔力で感覚を研ぎ澄ます。
自分自身を強制的に『ゾーン』に入れる。
これで一秒が約八秒の体感で行動できる。
この『超ゾーン』とも言うべき状態で発揮するのが、既に展開済みの『魔力のフィールド』だ。領域内の状況を一瞬で掌握できる。
そして極めつけ。『身体能力増加』。ここで上げるのは行動力と敏捷性。この二つを通常の八倍に上昇させる。
この三つのコンボが完成した時、私から見る世界はスローモーションになる。
『時を止める』という力を使われる前に、これで相手を仕留める……
「きゃあ!」
反射的に声が出る。
目の前にナイフが飛んできていた。
一本どころではない。
私とホークに対して大量のナイフの包囲網が完成していた。
本当に時間を停めてきた。
停止した時間の中で大量のナイフをばら撒かれた。
数が多すぎて、回避は不可能。弾き飛ばすしかない。
だが、弾き飛ばすにもしても、数が多すぎる。
特に、片手しか使えないホークは、この時点で詰んでいる。
こうしている間にもナイフは迫ってきている。
私が何とかするしかない!
全てのナイフの位置は把握出来ている。
その数『八十七本』。
さらに、そのナイフ群の外、位置的にホークの真上から、男が二本のダガーで飛び込んできている。
この時間がない状況で実行する作戦はシンプルに一択だ。
すべてのナイフを処理した後に、本体を叩く。
行動プランは完成した。あとは叩くだけだ。
すべてのナイフを一筆書きのラインで繋いでいく。
ラインの終着点はフードの男。
私の最速の技で、全てを撃ち落とす。
「居合術……閃き!」
頭に描いた線を辿っていく。
剣に魔力を込めて、武器破壊の能力でナイフを粉砕していく。
あたりに粉砕された金属の破片が舞っている。
八倍速とはいえ数が多い。
間に合え……
「ラスト!」
最後のナイフを粉々に粉砕する。
そのままの反動で地面を蹴り、暗殺者を地面に蹴り落とす。
グシャ!
嫌な音を立てて男は地に叩きつけられた。
時間感覚の効果を解除し、男の頸動脈に刃を突きつける。
「これで終わりよ。観念なさい!」