迎撃 その3
ザシュ!ザシュ!ザシュ!
斬撃に弾かれたナイフが木の枝に突き刺さる。
合計三本のナイフ。
そのナイフの刃には猛毒が仕込まれている。
ザンッ!
ナイフが突き刺さった枝を根本から切り落とす。
植物にも効果ある毒かはわからないが、念のため切り落としておく。
飛んできたナイフの大元に視線を移す。
『剣』対『ダガー』ではリーチ差で、圧倒的にホークの方が有利なはずだった。
しかし、フードの男は持ち前の機動力を駆使し、攻撃をかわしながらホークの懐に入り込もうとする。
別にホークが遅いわけではない。
「どうした剣士。それで全力か?こんなに沸るのはいつぶりか?もっと殺し合おう!」
見ていられない。あのダガーに塗られた毒は、おそらく強力な毒薬。わずかでも切られたら一発でアウトだろう。
あのホークが超近接の戦闘を強いられている。
あの間合いは相手の距離だ。少しでも間合いをとって有利な状況を作らなくちゃ。
「しつこい!」
ホークがカウンターでダガーを弾く。
その衝撃に耐えられず、殺し屋は強制的に武器を手放すことになる。
絶好のチャンスだ。
そのままの勢いで横に薙ぎ払い追撃。
しかし、地に伏せ追撃を回避。その超低姿勢から全身のバネを利用し、バク宙から回転しながら離脱する。
「かわされたけど……これで距離をとれた。これでリーチのあるホークが有利に……」
シュ!
たなびくマントの裏からナイフが現れた。
真っ直ぐとホークの眉間に迫り来る。
「うわ!危なっ」
真横に飛び回避行動をとる。
ナイフら頬をかすめ、地面に突き刺ささった。
「やっと命中したな。これで終わりだ。その毒は一分で人の体をむしばむ」
「ホークッ!」
頬から血が流れていた。
「参ったな。これでオレの負けか。いい勝負できていたんだがな。ヤバい……痺れてきた」
「なんだ。諦めるのか。まだ足りない。もっと戦え!」
男が叫ぶ。
「おい!そこの魔女!お前なら魔法で毒を消せるだろ。早くしろ。死ぬぞ」
「言われなくても!」
うずくまるホークにかけ寄り、傷口に手をかざす。
「あぁもう!治癒系は得意じゃないのよ」
弱音なんて吐いていられない。これをやらなければ、この人は死んでしまう。
全ての意識を血管に入った毒に集中する。
まずい。だいぶ流れてしまっている。
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ…………」
私、いま攻撃されたらやられちゃうな。
でも、今はこっちが優先。
「見つけた!」
一気に魔力を流し込む。
私の場合の毒への対処法は中和や回復ではなく、毒そのものを殺す事だ。
体内で散らばってしまった毒に魔力囲い拘束する。
その絡み取った異物に意識を集中し、分解消滅を促した。
「ふぅ……間に合った」
体内に入った毒を完全に殺す事ができた。
今のは危なかった。結構ギリギリだった。
「ありがとうフレデリカ。命拾いした。大きな借りができたな」
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