迎撃 その1
四週目に入った。
何をやっているんだアイツ。
遅くとも二週間あれば相対するはずだけど。
おそらく、これは相手の作戦だ。
精神的にプレッシャーをかけているのだ。
さらには、この状況に慣れはじめてきた。慣れは集中力や警戒心を弱くする。
それに半径三十メートルに侵入者を感知できる魔力のフィールドを常に張っている。魔力の消耗は少ないとはいえ三週間張り続けているのは初めての経験だ。
いつ来るかわからない襲撃がある今の状況で、これを解除するのは不安だ。
終着が見えない、ただ魔力を少しずつ削り取られていくのは辛い。
唯一の救いは、ゆっくりと流れていく毎日。
朝目覚めてから朝食を用意して、午前中に家事をこなす。
午後はお散歩したり、ホークに剣術を習ったり。
純粋に剣の技術だけで言えば、私はホークの足元にも及ばない。あらためて、この人の凄さを認識する。
何よりホークと二人だけで過ごす時間というものが懐かしく感じる。昔みたいに沢山お喋りしたりはしないけど、この貴重なひとときを、とても幸せに感じる。
永遠に続かない事はわかってはいるけど、今だけはこの時間を深く考えず、自然体で過ごしたい。
聖騎士の三人にはお店の事をお願いしている。
勇者三人組も、国の何かで手がはなせないみたい。
しばらくは二人だけの日常になる。
キーン!
張り巡らしている魔力が震えた。
「来たっ!」
ついに現れた。
北側の崖にある岩場を抜けて近付いてくる。
それで隠れているつもりかしら。残念だけど丸見えよ。
「ホーク。来たよ。返り討ちにしてやりましょ」
『武器破壊』のショートソードを腰にさす。これが今の私の愛剣だ。
「あんまり気が進まないよな。殺し屋追い返したら亡命するかな。こっちは平和に暮らしたいだけなんだがね」
ホークも自分の剣を手に取る。
大丈夫。負けるはずがない。
こっちはアクワ国最強の剣士と最強の魔法使いのコンビなのだから。