再会 その5
「あの時……シャルが手の届かない所に行っちゃった時……私は……私は怒りと悲しみで何も分からなくなっちゃって。その怒りのままに行動してしまった。正義とかじゃなくて、自分の感情だけで行動しちゃったの。だから、あなたに罰を与えたとか、『タンク』というシステムを無くさないとみたいな使命でやったわけじゃない。ただの復讐だった。あとから聞こえのいい理由をとって付けただけ。あれはただの『破壊』。だから私も償わなきゃいけないの。だから……ごめんね……」
二人に背中を向ける。
ちょっと我慢出来そうもない。
「外の空気すってくる。すぐ戻るから」
倒した椅子をそのままに外に飛び出す。
少し離れた木の幹に寄りかかり声を押し殺す。
「うぅ……」
我慢しきれなかった声が、口を覆った手の隙間から漏れる。
目が熱くて痛い。
こんな私は人に優しくされる資格はないのに。
聖騎士のみんな。三人の勇者たち。そしてホーク。
なんで、こんなに優しくしてくれるのだろう。
「うっ……うぅ……」
背後に人の気配を感じる。
お願い。今は話しかけないで。
頑張って我慢しているのだから。
こんな姿見られたくない。
気配でわかる。ホークだ。
「……すぐ戻るって言ったのに」
「そんな事言ったって放っておけないだろう。親しい人間が苦しんでいるのに」
私のもたれかかる大木の反対側から声が聞こえた。
木の影の見えない位置にいるのは、私を気遣ってくれているのだろうか。
「フレデリカの言う通りたくさんの人達を傷つけたのは事実かもしれない。だが、それによって救われた命もたくさんあるわけだよ。オレは真相を知っていながら何も出来なかった。フレデリカが『タンク』計画を、あのタイミングで潰さなければ、さらに大勢の人達が『タンク化』されていたんだ」
「でも!私はみんなに優しくされる権利なんてない!同情してくれても、結局私は人殺しなんだよ!」
まったく……こんな顔見せたくなかったのに……涙でぐしゃぐしゃだ。
「同情とかで優しくしてるわけじゃない。皆、お前の事が好きだからなんだよ。今までのフレデリカの事をわかった上で許しているんだ。だからお前も、それに応えないといけない。みんなの事を大事に想うなら」
「……ねぇ、最後にするからちょっと貸して」
立ち上がり、ホークの方に向き直る。
「貸すって何を貸せばいいんだ……」
ボフッ
ホークの胸元に顔を押し付ける。
声は出していないけど絶対気付かれている。
そんな私に、ホークは何も言わずに付き合ってくれた。
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