脱走兵 その3
「意外と早い再会だったわね……っていうか、よく私の家を突き止めたわね。しかもステルス魔法かかっているのに」
そうなのだ。私の家にはステルス迷彩魔法が常に発動している。
この魔法が付与されたものは、そこに『それ』がある事を、しっかりと脳で認識していないと存在に気付くことができない。
簡単に言えば『一見様お断り』なのだ。
つまり、どんなに凄腕の探索のプロだろうが暗殺者だろうが、自力でこの屋敷に到達する事はできないのである。
「なんて事はない。三勇者の少女に張り付いたのだ。彼女がフレデリカ・クラークと頻繁に接触している事はわかっていたからな」
なるほど。ニーサちゃんを尾行したという事ね。
この事はニーサちゃんには黙っておかないと。彼女、責任感じて落ち込んじゃうだろうし。
「まぁ、いいけど。それで何の用なの。ここは私たち以外は誰もいないから、派手にやっても大丈夫よ」
ちょっとだけ大袈裟に拳を握り、指をパキパキ鳴らしプレッシャーをかける。
「いいや。今回はやり合いに来たわけではない。次のターゲットについて教えといておこうと思ってな」
「どーでもいいわよ。そんなの。そんな事で、こんな辺境まできたわけ?殺し屋さんっていうのもヒマなんだ。ご苦労様」
皮肉たっぷりに言ってやったのに、表情は変わらないのが癪だ。
「わかった。それじゃあな。ちなみにターゲットは脱走兵だ。元アクワ軍の。いろいろ内部事情や機密事項を知っているようでな。王国直々の依頼だ。名前は……」
私の知っている人物の名前が聞こえた。
「お前ぇぇ!」
体が勝手に動いていた。
右手を魔力で鋼に変えて、殺し屋のみぞおちに突きを繰り出す。
ドスッ!
ヒットしたが手応えがない。
あたる寸前に後ろに飛び退いて威力を殺された。
殺し屋の口から出たもの。
それは私が何度も何度も呼んだ名前だった。
その名は……
『ホーク・バーナー』
ここまでお読みいただきありがとうございます。
気に入っていただけたら、下にある星マークから評価や、ブックマークをよろしくお願いします。