武器品評会 その4
再び群衆を掻き分け関係者席へと戻る。
「すみません。『負けん屋』の者ですが、出展していた剣を引き取りに参りました」
数人で雑談している鑑定師の一人に声をかける。
顔を見ると全員評点を出した鑑定師だ。
点数なしという偉業を成し遂げてしまった張本人としては恥ずかしい。剣を返してもらったら、さっさと退散しよう。
「おおっ!ちょうどいいタイミング。皆で噂していたのだよ。少し時間をもらえないだろうか。この剣について話を聞かせてほしいのだが」
鑑定師の中の白鬚をたくわえた長老のみたいな老人が前に出てきて握手を求められる。
「皆、勘違いしているようだか、そなたらの持ち込みされた剣の評点は零点ではないのだよ。だから評点なしと発表したのだか。分かりづらかったかもしれん。気分を害されたであろう。申し訳ない事をした」
(えっ?どういうこと?)
何かおかしな展開になりそうな予感がする。
「お恥ずかしい話だか、我々の鑑定魔法では鑑定出来なかったのだよ。いや。正確には鑑定結果は出たのだが、なんにも詳細が分からなかったのだ。どんな劣悪な品でも劣化具合や魔法がこもっているアイテムなのか等々、情報が出てくるのだが。この剣に、関しては不自然なくらい『普通』な鑑定結果なのだ。もし問題ないようなら何かで試し斬りさせていただけないか」
「え、ええ。それは構いませんが。何か切るものが……」
「その話待ってもらおう!我が店の名剣で見極めてやる」
早速ややこしい展開に。
先程絡んできた一行が話に割り込んできた。
「これはジブリ商会様。今回のお品も素晴らしいものでした。これからもより良い品をお願いします」
「いやいや。今回のものも我々としては最高レベルのものが用意できませんで。申し訳ないです」
全然申し訳なさそうな感じはない笑みを浮かべながら、こちらに近づいてくる。
「それで、どのような形で見極められるのでしょう?」
鑑定師の一人が面倒そうに問いかける。
ジブリ商会とやらを厄介視しているのは私たちだけではないみたいだ。
「いや、我々で雇っている専属の剣士がウチの剣を使い、その剣の斬撃受けてあげましょう。ウチの剣士は達人級で、受けただけでその剣のレベルをはかれるのですよ。一流の剣で一流の剣士が鑑定するのです。間違いありませんよ。わはは」
こちらは、まだ何も言っていないのだけど勝手に話が進んでいく。
「ジブリ商会さんは、ああ言ってますが負けん屋さんはどうでしょう?嫌なら断っても大丈夫ですよ。試し切りなら、この木刀でいいでしょうし」
どうやら鑑定師さんはまともな思考を持っているようだ。安心した。
「いやいや。まさか断らんだろ。この有名なジブリ商会が見てやろうというのだ。こんなナマクラを。普段なら絶対ありえん事だぞ」
心の中で切れかかっていたものが限界を迎えた。
これから起こるであろう騒ぎは容易に想像出来たが、この衝動は止められそうもない。
こうなると逆に楽しくなってくる。
「あら本当ですか?是非お願いします。私も少々の剣の心得があるものですから。私が振るわさせていただきます」
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