武器品評会 その2
いや……さすがにこの結果はショックだわ。
横を見ると叡智さんが、今まで見たこともないような表情で青ざめている。
あんなに張り切っていたのだ。無理もない。
私も叡智さんのおかげで、それなりにヤル気になったから頑張って笑顔作ったんだ。そして叡智さんの作った完璧な台本通りに喋った。
それが、この結果だなんて。
この品評会。順位が付くわけではないのだが優れている武具の目安として評価ポイントがある。
審査員五人で、最大五点与えられる。
有名な名工を抱えているところは知名度の優位性もあり、五点を獲得できることがほとんどみたいだ。
ちなみに品評会の歴史上、過去に『点数なし』というのはなかったという。
そして、ついに今年『点数なし』という伝説をつくった武具店が現れた。
それが私達『負けん屋』
「……フレデリカ様。一度、品評会の結果ごと、この会場を焼き払っちゃいましょう。そうすれば、すべてなかったことに……ブツブツ」
いつも冷静な叡智さんが怖いことを呟いている。
これは相当きている。
「ちょっと叡智さん。ほら。私達の剣って鑑定魔法には引っかからないじゃない?だから仕方がないのよ。実際使ってくれているお客さんはわかってくれてるよ。ねっ?」
まわりからは子どもをあやしている母親のように見えるかもしれない。
今日は、このまま帰ってゆっくり休もう。
叡智さんには明日ものんびり休んでもらって、心の傷を癒してもらおう。
「へぇー、おねえさん達が噂の『点数なし』の武器屋さんなんだ」
この空気を読めない数人の男たちが、笑い声と一緒に近づいてくる。
声を聞いただけでわかる。負け犬を嘲笑いに来たのだ。
説明してくれなくても理解できる。
「よくもまぁ、そんな普通の剣で我々の超一流の剣と競おうとしたものだな。可笑しいすぎるぞ」
この失礼すぎる集団は一体何なのだろう。
まぁ、この台詞から察しがつく。
おそらく、品評会に参加して高評価をもらった、どこぞの人間であろう。
「そんな競おうなんて思っていませんよ。お客さんに薦められて、力試しの気持ちで参加させていただきましたので」
この手の輩は、適当にあしらって早々に帰ってもらった方が無難だ。
「店がたいした事ないとお客の質も下がるんだな。見事に実証されたな。わはははは」
下品な笑い声が撒き散らされる。
まわりにいた人達も『何事か?』という表情で足を止める。