大円団 その4
窓から入ってくる、お日様の光で目が覚めた。
「う……うーん。太陽があんなに高い位置に……寝過ぎた…」
おそらくお昼ごはんの時間くらいだ。
横を見ると勇者の少女が寝息を立てている。
起こさないように、そっとベッドからおりる。
音が立たないように部屋の扉を閉めると部屋の外に叡智の聖騎士が立っていた。
「おはようございますフレデリカ様。昨夜はお疲れさまでした」
こんな幼い容姿しているのに、私より早起きして身支度しているなんて。なんか背徳感みたいなのを感じる……
「おはよ叡智さん。ずっと部屋の前で待ってたの?大変だからいいのに」
「いえ。昨夜は黄色の勇者と寝室に入ったのを確認しましたので念のために」
なるほど。私が勇者に寝込みを襲われて殺されないか心配していた、といったところかしら。
「大丈夫だよ。ニーサちゃんはそんなことしないよ。でも心配してくれてありがと」
「すみません。余計な心配でしたね。時に、他の皆様は朝から剣の特訓とやらをされているみたいですが。フレデリカ様も参加されますか?」
「えー!私もやるー!ちょっと準備してくるね!修行するなら誘ってくれればいいのに。あの子たちしごいてあげなきゃ。ふふふ」
三人を一度に相手するのは、なかなか骨が折れることだか、一対一の勝負なら、まだまだ私も遅れはとらない。
今回、強敵を倒した自惚れで、命を落とさないように鼻っぱしを折ってあげる人間は必要だ。
それから数時間。勇者二人と閃光さん、途中からニーサちゃんも交えて模擬戦大会が行われた。剣の腕を鍛えられた上、深夜の高カロリーも消費できて、有意義タイムとはこのことだ。
その日の夜は『魔竜討伐お疲れさま会』と称して、盛大な晩餐会を開いた。
ニーサちゃんと二人がかりで得意料理を全力で披露して料理対決した。敵対関係している人間同士とはいえ楽しい時間が過ぎていく。
翌朝、勇者一行は魔竜討伐の報告の為、王都に帰っていった。
旅立つ前に、話があるとスパークに呼び出された。
「フレデリカさん。オレたちはアンタに家族を殺された事は忘れていない。でも、そうなってしまった経緯も知ってしまったし、実際アンタらは人間を救おうとして戦っているのもこの目で見た。だから……だからこれ以上は責めないことにした。これがオレたち三人の出した答えだ」
一方的にそれだけ言い残し、去っていった。
私が必死に涙をこらえている事に気づいたのだと思う。
聖騎士三人にもスパークの言葉を伝えた。
最初は、無言で聞いていた彼らだったけど、話を聞き終えた時には一緒に喜んでくれた。
王国とは敵対関係にあるけれど、あの三人は協力していく道を選んでくれた。
これから先、力を合わせないと乗り越えられない事態も起こるかもしれない。
私は彼らへの協力は惜しまないつもりだ。
アクワ国も一つになれたし、いい時代が築いていけるだろう。
「聖騎士さん。これからもお世話かけると思うけど、よろしくお願いします」
これまで、いろいろ面倒をかけたお詫びと感謝を込めて頭を下げる。
「フレデリカ様。それは我々もですよ。あたし達は家族になるって決めたのですから協力して助け合うのは当たり前の事なんです」
叡智の聖騎士の言葉に、剣と盾の聖騎士も深く頷く。
「そうだね!」
私はこの嬉しくて愛おしい気持ちを我慢できなくなってか三人を抱き寄せた。
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第三章終了です。
予定ではあと二つの章で完結予定です。
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