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ゴッドブレス 魔法戦車と戦少女  作者: きるきる
第一章 魔法戦車と魔法少女
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万能戦車スカイフィッシュ(仮)

 あれからどのくらいの時間が経過したのだろう。

 さっきまで、雨と風が私たちを横殴りにしていたと思ったのだけれど。

 視線だけを動かして、穴の空いた天井から空を見上げた。

 あぁ、青い空だ。白い雲がすごく綺麗。

 なんだか私、青空を泳ぐお魚みたいだ。

 そうだ。この機械式魔法戦車を『スカイフィッシュ』と名付けよう。絶対かわいい……あれ?かわいいかな?かわいいよね。なんか頭がボーとして、うまく考えがまとまらない。

 それにしてもダルいよー。着ている服が重く感じる。脱いじゃいたい。でも両手にケーブルが付いちゃってて服脱げないや。せめてブーツだけでも……

 あぁ……そうだった。もうブーツは脱がせてもらったんだった。


「フレデリカ。大丈夫か?」


 少し下の方から知っている声が聞こえる。私の好きな声だ。えっと……誰だっけ……あぁホークだ。

 お話したいけど疲れちゃって声が出ないや。


「フレデリカ!聞こえるか?あと三十分くらいで基地に着くから頑張れるか……って限界だな」


 ホークが何か言っているけど頭に入ってこないや。


 ドシュ!


 激しい振動が車両を揺らした。

 たぶん着陸したんだろう。そういえばずっと空を飛んでいたんだった。

 それにしても着陸が下手くそだ。乗り心地悪いぞ。ホークの下手くそ……


プシュ!


「あうっ!」


 急にケーブル抜かないでよ。びっくりするから。


「がんばったなフレデリカ。あとは俺が基地まで歩くから。一時間半くらいで着くと思う。眠っていいから。おつかれ」


 なんか……いい匂い……これってホークの背中……あぁ、なんか安心する……

 でも……もう……限界かも……おやすみなさい……


 私の意識は一気に深い眠りへと落ちていった。





 ううっ……ちょっと息苦しい。

 何これ。私、なんか液体に浸かっている?

 しかも、また勝手に服脱がされて裸だし。

 それにしても……


(んんっ、温かくて気持ちいい……)


 あぁ、コレって治療用のカプセルの中だ。

 よくわからないけど、半液体の治療薬に首から下が浸かっている。これが温かくてお布団の中みたいだ。

 息苦しく感じたのは、この酸素吸引用のマスクのせいかもしれない。

 気持ちよすぎて死ぬまでこうしてたい。


 んんっ……眠い……ちょっとだけ目閉じちゃお。


 私は再び眠りに落ちていった。





「ううん……ホーク殺すわよ……あぁ……あら、おはよホーク」


 目を覚ますと、ホークの顔が目に入ってきた。


「おはようフレデリカ。元気そうで何よりだ」


「おはよホーク。あなたも元気そうね。でも、今の私の姿を見て元気だと判断できるあなたの洞察眼は羨ましいわ」


 今の私は、よくわからない点滴が二つ腕に刺さっている上に、よくわからないカプセルが両手首の魔法接続のコネクター部分にささっている。


「いや、お前の寝言がな。オレの事を砲台につめて敵に向かって撃ち出すとか、まぁまあヒドイ事言っていたからな」


「おかしいわね。心にも思っていない事が寝言で出るなんて」


「まぁ、それはいい。あと『万能戦車スカイフィッシュ』てなんだよ」


「あら、とてもかわいいネーミングね。私ってば、いいセンスだわ」


 マ、マジなの私。寝言とはいえ、『万能戦車スカイフィッシュ』は酷すぎる。

 ちなみに『スカイフィッシュ』とは、大量の人間が戦場で命を落とした時、その死んだ残留思念が、その空間にある魔力と結合し、空中を動き回る現象の事を指す。

 その動き回る動きと形状が魚に似ていることが名前の由来だ。

 戦闘車両の名前としてはとても縁起が悪いと言うことは間違いない。


「まぁ寝言の事はいいとして……今日はフレデリカ、君に話があって……だな」


 あまり見た事のない神妙な面持ちで話し始めた。


「前回の任務で、オレらが使っていたアノ高価な戦車。ほぼ全壊に近くてだな。予備のパーツで修理しようとしたんだが、費用見積もったらゼロから組み立てた方が安くつくんだよ。それの責任というか、状況報告を出さないといけなくなって、オレはしばらくデスクワーク専門にならないといけなくなった」


「責任って言ったって私たちに落ち度はないわよ!戦闘記録調べればわかる事でしょ!」


 柄にもなく熱くなってしまった。

 でも、あんなに命ギリギリで必死になって戻ってきたのに、私たちが壊したから責任とれなんて納得できない。


「戦車だけじゃないんだよ。あの蒼い剣を使用した事も問題なんだよ。そもそも作戦自体も失敗してるしな」


 たしかに任務は完遂していないけど……


「だから、すまない。しばらく俺たちのコンビは解消になる。俺がもどるまでの間は別のエースと組んでもらう事になる」


「……わかったわ。ホークが戻ってくるまで待ってるから。だから必ず帰ってきてね」


 精一杯の笑顔を送った。

 上手に笑顔を作れているだろうか。あまり自信がない。もしかしたら引きつってしまっているかもしれない。


「もし、時間が作れる様ならご飯食べに来て。ホークの好きなもの作るから」


この時の私は、この一時的なパートナー交代を安易に考えていた。

 だけどこの出来事が、これまでの私が考えていた世界の崩壊につながる事になるんだ……

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