魔界へのゲート その2
叡智さんのこんな惚けた顔初めて見る。
ちょっとだけ優越感。
「フレデリカ様。どういう事でしょう。言っていることが理解できません」
ふふふ。いつもすまし顔のこの子を驚かせちゃおうかな。
「しょうがないなぁ。見せてあげるね」
右手の中指と人差し指で空間を突き刺すイメージ。
二本の指に魔力を込める。
左手も同じ様に。
両手の指の先端を合わせ、そこを起点に空間を引きちぎる。
二十センチほどの黒い穴が空中に出来上がった。
「なっ……こ、こんな事いつ出来るようになったのですか⁉︎」
驚いてる驚いてる。
「さっき冥王竜がやっていたじゃない?アレ見ていたらコツ掴んじゃったみたい。ね?すごいでしょ?」
信じられないって表情してる。もっと私の事を敬ってもいいんだよ。
「はい。初めてフレデリカ様の事をすごいと思いました」
何よ。その『初めて』って。
もっと素直に褒めてくれていいのよ。
手のひらを合わせて裂けた空間を閉じる。
「まぁ、いいわ。とにかくあの巨体を送るくらいのトビラは開けるよ。どうかな?送っていい?」
「はい。それがいいかと思います。アレは、こちらの世界にいてはいけない生物ですから」
いつの間にか、いつもの冷静な聖騎士に戻っている。
「じゃあ、早速やっちゃうね」
先程と同様にトビラを作る。
ドラゴンの亡骸の下に闇が広がっていく。
先程と違って、離れた場所に、なおかつ巨大なものを作らないと行けない。
さすがにキツい。
少しでも集中を切らすとトビラが閉じてしまいそうだ。
ゆっくり、ゆっくりと穴を広げていく。
冥王竜の亡骸が少しずつ動き始めた。
吸い込まれるように闇の中に沈んでいく。
あと少し。
異常な事態に、三人の勇者も慌ててかけよってくるが、説明は叡智さんに任せよう。
ドラゴンの巨体が完全に闇の中に沈んで見えなくなった。
闇の向こうがどんな地形になっているかは分からないが、これで今回の件は一件落着だ。
開いた時とは反対に、閉じる時は一瞬で消えた。
「ふぅ。これで完了」
今回の事件は命の危機もあった。
よく乗り切ったと思う。
勇者の力もなければ乗り切れなかったし。
その彼らとの関係性の問題も解決していない。
すべての問題が解決したわけではない。
さて、これからどうなるやら。