魔界へのゲート その1
月の光を反射して銀色の鱗がキラキラと光っている。
これが冥王竜の本来の姿。
私の住んでいる屋敷くらいはある。
その巨大なドラゴンの亡骸に、焼け残った木も、すべて薙ぎ倒されていた。
冥王竜の言っていた通り、この巨体で人間サイズと戦闘するのは不利かもしれない。 特に、あの三人の勇者のようにスピードで撹乱してくる相手には同じ大きさの方がいい。
「フレデリカ様。この死骸どうしますか?このままにしておくのもどうかと。敵だったとはいえ、放置するのは忍びないですし。あたしの炎なら骨も残さず燃やし尽くせますが」
たしかに叡智さんの言う通りだ。
このまま腐って朽ちていくのは可哀想だ。
普通は故郷に帰してあげるとかだと思うけれど、竜族とかはどうなのかな?家族とかいるかもしれないし……うん、帰してあげよう。
「叡智さん。やっぱり魔界に帰してあげた方がいいと思うんだ。竜族の王様なんだし家族とか仕えている人……じゃないか。えっと……竜族の仲間とかがいると思うし」
「おっしゃる事はわかるのですが、次にいつ魔界のトビラが開くかわかりませんし、あの巨体をどうやって運ぶ気ですか?そこまでお考えなのですか?バカじゃないですか」
えっ?今私の事バカって言った?
この子、そんな事を言わないと思っていたけど。
もしかしてブーストしてる影響?確かに閃光さんと盾さんは性格が豹変しちゃったけど。この子は賢いから自分を制御出来ているとばかり思っていた。
「ちょ……ちょっと叡智さん……」
「そもそもですよ。最後に仕掛けた四段攻撃も知らされていなかったですし。危うくフレデリカ様に爆烈魔法を落とすところでした。空想物語に感化影響を受けてる剣も、血に酔っ払ってしまっている自己陶酔の盾もですよ。勝手に攻撃しかけて。作戦ってものを知らないのでしょうか。こんなだから我々は……ブツブツ」
この子が一番悪い影響が出ている。
「……そう思いませんかフレデリカ様ぁ?」
なんか軽く怒っているんですけど。なんで……?
「ま、まぁまぁ。私も反省していますからお怒りを鎮めてください。次回からは、ちゃんと相談しますから。ね?」
真面目に謝罪しているつもりだが見た目が子どもなので、どうしても聞き分けのない子供をあやすみたいになってしまう。
「反省だけじゃ困りますよ。それで話を戻しますが……」
「ああ、それなんだけど。私、魔界にゲート通せるよ」
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