決着
「ぐおお!ぬぬ……抜けん。がはっ!」
口から血が溢れ出す。
うう……なんだろう。自分の姿をした者が剣で貫かれている光景は複雑だ。
「もう終わりです。これ以上抵抗はしないでください」
黄色の勇者が背中から突き刺した剣をさらに押し込む。
刃が吸い込まれていく様に沈んでいく。
それとは反対に胸からは刃が木の枝の様に伸びていった。
その枝の根元からは赤い樹液が溢れ出る。
地面にできる赤い水溜りは、ゆっくりとその面積を広げていった。
「ぐわぁぁ!おのれ……こんなやつらに……こんなやつらぁにぃぃ!」
頭上から赤と青の影が降ってくるのが見えた。
ザシュ
肉に刃が突き刺さる鈍い音が二つ響く。
合計三本の剣が体を貫通している。さすがに助からないだろう。
「はぁ……はぁ……くそっ。こんな状態では、お前らを道連れにもできん……先程まで余は勝利を確信していたのだが……おかしいのう。どうしてこうなった……なら、余を倒したお前らにいい事を教えといてやろう」
なんとなく予想がつく。
薄々は感じていた事だ。
「どうせ、あなたより強い奴が向こうの世界にまだ残っているって言いたいのでしょ?」
私の発した言葉に、味方一同が真顔でこちらを振り返る。
「こちら側に勇者がいるとはいえ、いきなりのぶっつけ本番で魔界の一番を倒せるほど向こうの世界は甘くないと思うのよね。多分だけど、あなたは竜族で一番強いって事じゃないのかな」
「ふはは……わかっているなら話は早い。あやつらはこんな世界には興味も示さんかもしれんが。気まぐれで、こちらの世界に来るやもしれん。恐怖しながら毎日を過ごすがいい……」
冥王竜の息が止まった。
遠くの方で閃光さんが手を合わせている。
私もならって同じ姿勢をとる。
これって強敵にだった冥王竜への敬意を示している……と思う。たぶん。
冥王竜の体が変化し始めた。ほんとうの姿に戻るのだ。
「みんな離れて!」
『竜』と名前につくのだ。かなりの巨体をを持っているに違いない。




