決戦 その2
白い光に巻き込まれた木々が、炭になる事もなく燃えて消えていく。
「ほう。全員逃れたか。ならこれならこれならどうだ。ふん!」
何もない空中を裏拳で叩く。
その叩いた何もない空間から黒い霧が噴き出した。
次の瞬間、黒い霧の中から何かの生き物が溢れ出す。
一匹や二匹ではない。
翼が生えた蝙蝠に似た生物が星空を覆い隠した。
「こ……これは。もしかしてマズイ……」
皆の表情も強張っている。あまりの物量に、誰も動けないでいた。ただ一人を除いて。
「フフフフ……数があればいいってものではないですよ!こんな低級魔族……わたくしが全て蹴散らして差し上げます!」
盾の聖騎士の紫色のオーラが一気に膨れ上がった。
まわりに待機していた小さな盾が倍々に増殖した。
「わたくしの視界に捉われた時点で終わりです。ではいきますよ!」
掛け声と共に盾たちが一斉に空の魔物に襲いかかる。
雨が降る。文字通り血の雨があたりに降り注ぐ。
盾の体当たりをくらった魔物は爆発四散する。
「みなさまは全方位のシールドで防御してますわ。返り血はもちろん、あの程度の魔物の攻撃なら跳ね返します。気兼ねなく冥王竜を血祭りにしてくださいませ」
そう言う盾の聖騎士は、血の豪雨によって真っ赤に染まっている。血染めの鎧と口元の不敵な笑みが味方の私にも不気味にうつる。
やはりブーストかけると能力と同時に感情の変化まで起こるのかもしれない。
「では拙者も……奴の足止めを……参る!」
ほんのわずかな土埃を巻き上げ。剣の聖騎士は消えた。
それと同時に冥王竜のいる場所で激突音が響く。
音の方を見ると冥王竜が剣の聖騎士の剣を片手で受け止めていた。
「こやつめ。一瞬で四十二回斬りつけてきおった。鬱陶しいのお」
私からは斬りつけた動作すら見えなかった。
「相変わらずの速さだなぁ閃光さん。じゃあ私も行こうかな。青の剣と私と閃光さんで三人がかりで行けば少しは隙がつくれるかも……そういうわけであとはお願いね勇者の三人」
本命の三人の方を振り返る。
「死なないでくださいねフレデリカさん」
期待の黄色の勇者が不安そうな表情をしている。
「大丈夫だよ。ニーサちゃん達がなんとかしてくれるから。じゃあ行ってくるね。叡智さんもお願いね」
「バックアップはお任せください。回復が必要な時は戻ってきてください。瞬時に回復しますから。あたしもフレデリカ様の力でパワーアップしていますので。見てください。こんな感じです」
叡智の聖騎士の手に紫色の光が現れた。それをこちらにかざす。紫色の輝きはゆっくりと私の体に触れると全身に広がった。
「……すごい。一瞬で回復した」
キズと体力が全快した。
「コレまだまだ研究の余地ありですよね。普通の人間に使うと死んじゃうんですよ。魔の属性の人限定ですね」
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