決戦 その1
「フレデリカ・クラーク……援護お願いしてもいいだろうか」
敵対している相手に頼み事をするという行為が気まづいのだろう。青の勇者は、ばつが悪そうにしている。
「もちろんだよ。ねぇリンク。私のしてしまった事を忘れてほしいとは言わない。けど今だけは協力して戦おう!みんなを守ろう!」
できる事なら、また一緒に冒険したり、わいわい食事したりしたい。けど彼らの家族を奪ってしまった私に、そんな事を望む資格はない。
でも今は力を合わせて、目の前の敵を倒さなくてはいけない。
「ありがとう。感謝する。……さっき言った通り、我々の連携攻撃でカタをつける。正直、これ以上長引くと体力的に不利になる。次で決める」
「わかったわ。スパーク、ニーサちゃん。二人もお願いね!」
赤の勇者と黄色の勇者の目を見つめ意思を伝える。
「わかっている。あんたはオレたちの倒すべき敵ではあるが、強さだけは信用している。頼りにするさ」
「はい、フレデリカさん。もう迷いません。これで終わりにしましょう!」
これで準備は万端だ。
もう迷いもわだかまりもなくなった。
これなら勝てる。
全員が冥王竜を見据えていた。
「どうだ。余を倒す為の算段はついたか?こちらはついたぞ。先程の戦闘で見極めた。注意すべきはそっちの三匹の攻撃のみだ。そいつらの攻撃だけは余を傷付ける力がある。おそらく光の力。そこに神の気配を感じる。その三匹の攻撃さえ防げば余の勝ちだ。そして、他のゴミ虫の攻撃は無視しても問題ない。余が出しているオーラの障壁すら突破できんらしい。なんと貧弱な」
やっぱり勇者の力がないと攻撃が通らないようだ。叡智さんの見立て通りね。
本格的に私は役立たずだ。
でも役立たずでも、勇者たちの弾よけの壁くらいはできる。
勝利への道しるべくらいにはなってやる。
「どうした。かかってこないのか?それとも勝算がなくなって動けないのか。ならば余が戦いの狼煙をあげてやるわ」
冥王竜の手に魔力が集まっていく。
「みなさま来ます!散開してください!」
叡智の聖騎士の叫びに、全員が今いる場所から散った。
そのあとを白い魔力の帯が通り抜けていった。