再戦 その2
スパークのすべての力を込めた突きを左手に作った障壁で受け流す。
同時に空中からのリンクの回転斬撃を迎撃。ヒットするギリギリで真横に薙ぎ払い吹き飛ばした。
「もらいました!」
気配を完全に消したニーサが冥王竜の懐に潜り込んだ。勇者二人の迎撃で両手は塞がっている。絶対かわせない。踏み込んだ勢いのまま、顎の下から首に向かって刃を突き立てる。
サシュ
刃が頬をかすめる。
「くっ!なんで!」
絶対に命中するタイミングを外された事に戸惑っている。
「ふふふふ……はぁははは!おいお前。惜しかったな。だがお前には余を倒すのは無理だ。くっくく……すまない。笑いが抑えられん」
不快な笑い声があたりに響き渡る。
「余の姿だろ?お前と親しい者と同じ姿をしているからだ。余を斬る瞬間、躊躇が出ている。だから動きが遅れるのだ」
「なっ……そんな事は……」
「無意識だ。無意識に反応しているのだ。この姿に。こんな姿でも役に立ったな。もう終わりだ。死ね」
冥王竜の右手が変形して鎌になった。
「ニーサちゃん!」
魔力を展開しておいてよかった。この展開した範囲であれば好きな位置に瞬間移動ができる。
ガキーン
左手に握った蒼の剣で鎌の攻撃を受け止める。
「私の姿で変な変形やめてよね。気持ち悪いじゃない。あと、『こんな姿』で悪かったわね!このっ!」
ヒュン!
右手の魔力が繋がった魔法の剣を冥王竜の背後に投げる。
「これでっ!」
魔力の糸を引く。狙うは頸。
遠くに飛んでいった剣は正反対に方向を変え冥王竜の首すじを狙う。
ガキン
狙った場所へと鈍い音を立て見えない障壁に跳ね返される。
でも想定内。
剣に気をとられている隙に、黄色の勇者を抱え、冥王竜との距離をとる。
「ほう。いまの攻撃は余の間合いから出るためのオトリか。大した力もないくせにやるではないか」
「ニーサ!大丈夫か⁉︎」
勇者と聖騎士が黄色の勇者の元に集まる。
「みんなゴメン……わかっていたの。フレデリカさんの姿のアイツを斬りに行く時。どうしても腕の力が抜けちゃうの。さっきだって、本気の攻撃なら倒せていたかもしれない。わたし足手まといだから……後衛にまわった方が……うわっぷ」
黄色の勇者を力いっぱい抱きしめた。
「フレデリカさん……苦しぃいでふ」
「何言ってるのニーサちゃん。アイツと私は全然違うよ。ほら!確かめて。私のこと抱きしめてみて。ねっ?違うでしょ?私はアイツみたいに冷たくないし、生身の体だから暖かいんだよ。手も変な形に変形しないし。あなたと一緒に沢山楽しい事をして遊んだフレデリカだから。だから泣かないで。私も一緒に戦うから、さっさと倒して帰りましょ。そして、ご飯食べて、お風呂入って、また一緒に笑いましょ。ねっ」
サラサラの金髪を優しく撫でる。
「もし迷ったら私の側に来て。手を繋いで確認させてあげるから。だから、もう一踏ん張りしましょう」
「……わかりました。もう大丈夫です!いまフレデリカさんに触れてわかりました。アイツはこの世界の人達の平和を脅かす敵だって。だから、もう迷いません!」
この子は強い子だ。もしも私がニーサちゃんだったら、もっと上手く生きれたかもしれない。人も殺さずに、こんな魔に落ちなかったかもしれない。
この子を同じ目にあわせては駄目だ。自分が上手く出来なかった分、この子を守って必ず帰ろう。