お仕置係の白い狼
けいじばぁん、ありまぁす。
投稿日はクリスマスですが、半日寝てました。
推定ケモ耳プレイヤーに遭遇した俺たちは、今から案内される場所に行くかどうか、議論を重ねた。
「裏カジノは闇が深いです。借金を抱えたら労働ですよ」
「でも一度は行ってみたいじゃないですか! 1回だけ、1回だけだから! 先っぽだけ!」
「それ最後までやるやつですよね!? ダメです! 言っていませんでしたが、私が鉄鉱石を集めていたの、あれはカジノで背負った借金返済のためなんです!」
「......ならやめとこうかな」
「いや、別に賭けなくてもいいカジノだから大丈夫だよ?」
それは正しく鶴の一声だった。
失う物が無いなら、行くしかない。逆を言えば得る物も無いのだが、経験は得られる。ならば取る選択はただ1つ。
「「行きます」」
フードの中からニッと八重歯を覗かせた少女は、静かに路地の奥へと俺たちを案内した。
何度も曲がるうちに行き止まりに着くと、一見ただの壁だと思う取っ手の無いドアを開け、真っ暗な階段を降りた。
地下にあるドアの奥は、隠れ家的なバーだった。
「ようこそ、紡ぎ手。君たちはそれぞれ、誰も知らない秘密を握っているね?」
誰も知らない秘密......【世界依頼】の事か?
俺はまだ誰にも話していない。つまり、その事を知れるのはNPCのみ。
もしや、これもまたユニークなクエスト?
「ここではお手頃価格でドリンクも買える。カードゲームで遊びながら、交友を深めるといい」
「と、とりあえず何か頼みますか?」
案内されてカウンターに座り、ホッと息をついた。
俺はな〜よさんに頷き、メニューを開く。
初っ端から『生姜のチカラ』や『四葉サイダー』など、バーらしくないドリンクが並ぶ中、気になったことを聞く。
「これ、どれ頼んでも100Gなんですか?」
「そだよ〜。私が経営費をギャンブルで稼げなかったら、その時は値上げするけど。まぁ基本は100Gだね」
恐るべし、ギャンブルの街。経営費すら賭けに出すとは。
年季の入った木材の壁や、椅子やテーブルなどの高級感。そして客の邪魔にならない位置に飾られた調度品からは、あの小さな店長の莫大な資産を匂わせている。
数秒悩み、俺は『七色D』を。な〜よさんは『四葉サイダー』を注文すると、フードを取った案内人さんがカードを渡してきた。
黒いカードに金の文字で『バーD』と書いてあった。
が、それ以上に気になるのは──
「やっぱり耳、気になる? そっちの子も耳すんごい尖ってるけど。刺したら人殺せそ〜」
「えぁ、そんな、私は」
「冗談だよん。あ、私のことは『ディー』と呼んで。そこのマスターみたいにオーナーって呼んでもいいけど、あんまし慣れなくてね」
ニコッと可愛らしい笑みと共に手を差し出すディーさん。
さっきは見えなかった、青のメッシュが入った白髪と、一部では人気がありそうな狼の耳がピコピコと動いている。
一通り自己紹介をすると、ここまでの戦いについての話をしながらババ抜きが始まった。
「へぇ〜、借金抱えたんだ〜。幾ら?」
「えと、105万ほど借りてて、さっき全額返済しました」
「やるぅ! うん、君は見るからに運だけで生きてそうな感じだよね。あんまり戦闘とか得意じゃないっしょ?」
「......はい。さっきもミズキさんが倒してくれました」
「ほうほう。逆にミズキ君の方は戦闘オンリーって感じだね。物の見方とか歩く時の姿勢、いつでも彼女を守れる位置に居たり......経験豊富だ」
気のせいだろうか。今ディーさんの目がギラついて見えたような? その外見で戦闘狂とかやめてくれよ。
というかこの人、さっきから連続でペア組んでるな。
会話のついでとはいえ、読みが上手い。
「さぁ、ニブイチで私が上がるね。ミズキく〜ん、どっちがハートの9かな〜?」
「ディーさんから見て左です」
「じゃあそうするね......はい、上がりぃ!」
嘘だろ? 完全に裏の裏をかかれたんだが。
隣で負けが確定したな〜よさんを見ろよ。あまりの非道さに震えているぞ。
「あ、ごめん、ちょっと呼ばれてるや。しばらく戻れそうにないから、あとはマスターと相手してくれる?」
「カジノ、ですか?」
「ううん、罪人の処罰。ここ最近、紡ぎ手同士の殺し合いが激しくてね。片っ端からボコボコにしてるの。んじゃ、ごゆっくり〜」
PKのお仕置係、的なポジションなのか?
道中でな〜よさんに聞いた限りじゃ、お仕置係は運営が用意した対人戦のエキスパートだけ、という話だ。
なるほどな、どうりで俺を見る目や読みの勝負が上手いわけだ。この人はきっと、別のゲームではプロレベルに活躍していたのだろう。
それにしてもこの『七色D』、炭酸がキツい。
「シュワシュワ、凄いんですか?」
「尋常じゃないです。飲んでみます?」
「い、いいんですか? では1口......」
髪を掻き上げてストローに口を付けたな〜よさん。
超炭酸を飲み込んだ瞬間、目尻に涙を浮かべて耐え始めた。
「やっぱりそうなりますよね!」
「はいぃ......って、あああああ!」
「どうしたんですか?」
急に顔を真っ赤にして叫ぶなんて、何があったんだ?
「か、かかか、間接......きす」
「すみません、気遣いが足りませんでした」
「イヒっ! いえ、そんな! ミズキさん......可愛いですし」
あれ〜? もしかして俺、女性だと思われてる?
確かに顔はカッコイイというより可愛い方だと思うけど、それなりにゴツゴツしてるぞ?
まぁ髪も長いし、見ようによっては女性にしか見えないか。
「職業を変えてから、カジノに行きたいですね」
「ど、どんなジョブにするんですか?」
「特に決めてないので、選択できるヤツから適当に選ぼうかなと」
掲示板の『オススメ職業なすり付けようぜ』とかいうスレッドを覗いて、現時点で判明している面白うな職業を探す。
「......生産系のジョブは、戦闘系スキルを取りにくい代わりに品質向上系が手に入ります」
「DEXが上がったり?」
「ですです。でも、生産にもSTRが必要になったりするので、オススメしません。生産職でも」
うわぁ、ステータスの闇を感じるなぁ。
確かに生産職も、物によっては他のステータスが参照されたりする。その癖に、STRが伸びにくかったり、逆にDEXだけが大きく伸びたりと、バランスが悪くなる。
な〜よさん、闇を体で受けてきたんだろうな。
「さて、次の街はどうしましょうかね」
「あと、えと、次の街に行くには、火山と地下洞窟の攻略と......古代文明のボスを倒さないと、ですね」
「古代文明! ロマンのある響き!」
「クリアしたパーティの最低人数は12人。とだけ」
「......大きい?」
「それはもう、とてつもなく」
「......硬い?」
「それはもう、とてつもなく」
「......強い?」
「それはもう、とてつもなく」
ま、まぁ? 別に2人で倒さなくてもいいんだし? もしかしたら火山でセラの素材『灰溶岩』が手に入るかもだし? 行き詰まっても? 平気っていうかぁ?
......紲、どこに居るんだ。お兄ちゃんは会いたいよ。
「とりあえず、火山が気になるので行ってみたいです」
「わ、分かりました。私も火山で採れる鉱石が欲しいので、楽しみですっ」
さて、この2人でどこまで行けるのやら。
◆ ◆ ◆
『要注意ギルドを貼ってくスレ』Part 15
>>>940が次スレ建てること
124:怯える紡ぎ手
ハイドシャドウにはマジで気をつけろ。あいつらに人間の心とか無いから
125:怯える紡ぎ手
>>124
kwsk
126:怯える紡ぎ手
簡単に言うと演技派PKギルド
1→複数人が標的の場合、1人を行動不能にさせる
2→そこに数人で助けに行く
3→少し話して仲良くなったところをズブリ
127:怯える紡ぎ手
>>126
誰も信じられなくなりそう
128:ハナフブキ
PK処す。次はハイドシャドウ
129:怯える紡ぎ手
ハナフブキきちゃぁぁぁ!!!
是非とも悪人どもを成敗してくだちぃ!
130:怯える紡ぎ手
最前線プレイヤーが悪人シバくの、楽しそう
131:怯える紡ぎ手
情報集めたら新スレで垂れ流すわ
132:ハナフブキ
情報提供者にはお礼をする。
他にも極悪人が居たらおしぇーて。誅する
133:怯える紡ぎ手
良かったなPK共。アイドルの誅だぞ
134:ハナフブキ
誰がアイドルだって?
135:怯える紡ぎ手
>>134
誠に申し訳ございませんでした。
このオーナー、一体誰なんだー(棒)
最近思うんですけど、青メッシュって良いですよね。アオトウガラシ。