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火曜日の自習室の話

作者: 赤崎幸

1人、誰もいない自習室で僕は問題集に向かっている。

周りから見れば勤勉に見えるかもしれない。

でも僕は勉強がしたくて自習室にいるわけではない。

彼女が来るのを待っている。

僕が通っている塾ではクラス制になっている。

僕の授業がある日は毎週火曜日、水曜日、金曜日だ。

一方彼女の授業がある日は毎週火曜日、木曜日、土曜日だ。

僕と彼女の授業日が重なる日は火曜日。

いつからか火曜日の放課後は自習室で自習するというのが、僕と彼女の暗黙の了解になっていた。

どちらかが言い出したわけでもなく、何かきっかけがあったわけでもない。

ただごく自然とそういう決まりになった。

もちろん。この決まりになんの強制力もない。

でも毎週決まったように火曜日だけは僕と彼女は自習室で自習する。

自分でも何だか馬鹿だなと思いつつ律儀に守っている。

そんなことをぼんやりと考えていると、ドアが開く音が聞こえてきた。


「よっ!」


「よう」


彼女はやっぱり今週も自習室に現れた。


「あんたも相変わらず真面目ねぇ」


「そういうお前だって」


いつもの挨拶を交わす。

彼女は席に着くと自分の問題集を机に広げ始めた。

そこからはお互いの宿題やら予習やらを始める。

たまに短い雑談が挟まること以外には特に会話もない。

それでも僕はこの時間が何よりも楽しみになっていた。

何故なのかよく分からない。

なんだか心地よいんだ。


「そういえば前の模試の順位表張り出されていたわよ」


「あぁ見たよ」


「ふふん今回も私の勝ちね」


「だから見たから知ってるって」


彼女は僕よりも頭がいい。

かといって僕もそこまで成績が悪いわけでもない。

だから本当は自習室にこもって夜遅くまで勉強する必要はない。

彼女に会うのが目的なんだろうか。

いやそもそも同じ学校に通っているんだから毎日学校で顔を合わせる。

本当になんでだろう。

その後も短い雑談をはさみながら自習していると、塾の先生が下校の時間を知らせに自習室に入ってきた。

毎週のことながらこの瞬間だけはなぜかちょっと寂しい気持ちになる。


「んじゃまた明日学校で」


「じゃあね」


そういって僕たちはいつものように別れた。

あぁいつまでも毎週この時間が続けばいいなって僕は思った。


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