幕間其の弐〇〇さんのお考え
あの人が玄関から上がって廊下を歩いている。
うんうん。やっぱりあのスリッパにしてよかった。あの人の趣味とは違うかもしれないけど、とっても可愛らしいしよく似合ってると思うの! あの人もスリッパもとっても可愛いくて可愛さが溢れちゃってるもの♪
あぁ~っ!? あの人ったら、また洗面所を通り過ぎようとしてる。帰ったら、まずは手洗いしなきゃダメなんだからね!
ほら、扉開けてあげたから入って入って・・・こら、逃げようとしないの! ぷんぷん!
――バタン、バタンッ!!
そう思ってたら、余計な力が入っちゃって思ってたより強く扉を開け閉めしちゃってた。むぅ、幽霊になってから結構立つんだけど、まだ力の入れ具合がわからないなぁ・・・。
ほぉら、お水出しといてあげるから・・・ね? がんばろう?
あ、お水を止めちゃ駄目だよ! ほら、まずはお手々を洗いましょうね~。もう、わたしがお世話してあげないと駄目なんだから・・・うふふ。
わたしは彼の腕をそっと掴むと、水へと導いていった。
まずはじゃぶじゃぶ・・・はい、ハンドソープ流しますね~。う~ん、薔薇の良い香りがする。色も鮮やかな薔薇色でわたしの昔からのお気に入りなの。
それにしても、匂いだけは幽霊になってからもしっかりと感じるのよねぇ・・・やっぱり、お線香の香りを嗅ぐためなのかなぁ?
まぁ、悪いことじゃないよね。
もうっ! お手々だけだぁめ・・・今はウィルスが大流行してるんだから、ちゃんとくちゅくちゅうがいとがらがらうがいもしなきゃ!
めっ! お水はそれが終わるまで止めさせません!
う・・・そ、そんな顔してもダメなんだから・・・あなたには長生きしてもらいたいんだもん。だから、わたしは心を鬼にします!
はい、がらがらうがいしましょう?
「・・・・・・・・がっ!? あぐ・・・げはっ! ・・・・・・お・・・が・・・・・がふっ!!?」
あぁ、やっぱり咽ちゃった・・・わたしのお父さんも、がらがらうがい出来ない人だったなぁ・・・何度やっても、水が気管に入っちゃうって言ってたっけ・・・うふふ、あなたには悪いけど、なんだかすごく懐かしい。
あら? 彼ったら座りこんじゃった。うん、がんばったねぇ・・・偉い、すごく偉いよ! ふふ、いい子いい子♪
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