↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

妹の友だちがグイグイ来る 〜彼女に立候補って? 急展開過ぎるんだが〜

掲載日:2021/05/06

 ある日の休日のことだ。

俺は家でダラダラしている。

今日は大学も休みだし、他に予定も特に入れていない。


「兄貴ー? 今日、仁奈がうちにくるからー」

「へえ、そうなのか。ずいぶんと久しぶりだなあ」


 妹の言葉を受けて、俺はそう言う。

妹は女子高生だ。

そして当たり前だが、妹の友だちである仁奈ちゃんも女子高生である。


 彼女が小学生の頃は、よくうちに遊びに来ていた。

俺もいっしょにゲームをしたりしたこともある。


 彼女が中学生になってからは、うちに来る機会が減った。

何も妹と仁奈ちゃんが不仲になったというわけではない。

単純に、家の外で遊ぶ機会が増えたのだろう。


「私は今からコンビニに行ってくるよ。仁奈が来たら、お茶でも出してあげてよ」

「わかった。できるだけ早く戻ってこいよ?」

「善処するー」


 妹はそう行って、出ていった。

コンビニに行くなら、いっしょに行ったり、待ち合わせ時間をずらしたりすればいいのにな。

まあ、お茶を出すくらい別に構わないけどさ。


 そして、しばらくして。


 ピンポーン。

来た。


 インターホンの画面を見る。

仁奈ちゃんのようだ。

しばらく見ないうちに少し変わっているが、昔の面影も残っている。


 俺は玄関のドアを開ける。


「やあ。久しぶりだね、仁奈ちゃん」

「お、お久しぶりです。お兄さん」


 仁奈ちゃんがそう言って、頭を下げる。

相変わらずの”お兄さん”呼びか。

もちろん、彼女と俺に血縁関係はないが。

昔からの名残だ。


「妹のやつは、コンビニに行ってるってよ。上がって待ってな。お茶でも出すから」

「お、お邪魔しますね」


 仁奈ちゃんが靴を脱ぎ、うちに上がる。

とりあえずリビングに案内し、お茶を出す。


 仁奈ちゃんはお茶を少し飲みつつ、所在なさげに部屋を見回している。

俺は、特にすることがない。

1人で自室に戻るか?

いや、客人をリビングに放置するのもな……。


 しかし、特に話すこともなくて気まずい。

俺と仁奈ちゃんの、共通の話題と言えば……。


「妹が帰ってくるまで暇だね。何かする?」

「お、お構いなく……。あっ。あのゲーム、なつかしいですね」


 仁奈ちゃんが、リビングのテレビ付近の据え置き型ゲームを見つけてそう言う。

大奮戦スマッシュシスターズというゲームだ。


「ああ。小学生のときに、よくやったやつだね。暇つぶしにやってみる? まだ起動するはずだけど……」


 年に数回程度、思い出したときに起動して1人で遊ぶことがある。

最後に起動したのは数か月前か。

かなりの年代物だが、まだまだ現役だ。


「い、いいですね。やりましょう」


 そんな感じで、仁奈ちゃんとゲームをすることになった。

妹が帰ってくるまでの、ほんの暇つぶしだ。

そのはずだった。

しかし。


「う……。仁奈ちゃん、強すぎない?」


 おかしい。

こんなはずでは。

年に数回程度とはいえ、俺はこのゲームの現役だぞ?

数年ぶりにプレイする仁奈ちゃんに、なぜ負ける。


「えへへ。じ、実は、このゲームの続編をやり込んでいるのです。お兄さんは、持っていないのですか?」

「続編かー。特に理由はないけど、やってないなあ」


 まあ、大学生活で少し忙しかったしな。

なつかしいゲームをたまに遊ぶくらいならともかく、新規のゲームを遊ぶほどの時間はなかった。


「そ、そうですか。続編も面白いですよ? 今度いっしょにしませんか?」

「ん? ああ、そうだな。仁奈ちゃんがそう言うなら、前向きに考えておくよ」


 大学生活も落ち着いて、余裕ができてきたところだ。

新しいゲームを1つ遊ぶくらいの時間なら、まったく問題なく確保できる。


 その後も、仁奈ちゃんとこのゲームで遊び続けた。


「くう……。本当に、仁奈ちゃんは強いな」

「お、お兄さんは、ここのコマンド入力が少し苦手みたいですね……」

「これか? こう?」

「いえ、そうではなく。ここからズバッとして、ズズイッとボタンを押すのです……」


 仁奈ちゃんがアドバイスしてくれる。

かなり直感的なアドバイスだ。


「うーん……」

「す、少し失礼しますね……。指をこうして……。こうするのです」


 ……!

仁奈ちゃんの手が俺の手に重ねられる。

そして、コマンド入力について物理的なサポートをしつつ教えてくれる。


 柔らかい手だ。

それに、俺の顔のすぐ近くには仁奈ちゃんの顔がある。

心なしかいい香りがする。


 妹と同じで、まだ子どもだと思っていたが……。

もう、女子高生だもんなあ。

数年後には成人だ。

いつまでも子どもではないということか。


「な、なるほどな。よくわかったよ。上手くなった気がする。ありがとう、仁奈ちゃん」

「い、いえいえ。どういたしまして」


 まあ、仁奈ちゃんにその気はないだろう。

彼女にとって、俺はあくまで”友だちの兄”だ。

俺がそういう目で彼女を見てしまうと、妹と彼女との友情にも亀裂が入るかもしれない。

ここは、我慢しないとな。


「と、ところで……。お兄さんには、彼女さんはいるのですか?」

「へあっ!?」


 仁奈ちゃんからの思わぬ問いに、俺は変な声をあげてしまった。


「い、いないよ……。残念ながら、縁がなくてね」


 大学にも可愛い子は何人かいるが、俺とはさほど親しくない。

女っ気のない大学生活を送っている。


「そ、そうですか……」


 よしっ。

仁奈ちゃんがそう小声でつぶやき、ガッツポーズをしている。

そして、彼女が真剣な顔をして口を開く。


「お兄さん。わ、私なんて、彼女にどうですか……?」

「っ!?」


 仁奈ちゃんが赤い顔で迫ってくる。

ええ?

急展開過ぎるんだが。


 ……ははーん。

さては。


「……ドッキリか? 妹も影で見ているんだろう?」

「ド、ドッキリなんかじゃありません。コンビニに用事っていうのも嘘です。わたしが連絡するまで、あの子は帰ってきませんから」


 仁奈ちゃんがそう言う。


「マ、マジか……。妹もグルだったとは」


 赤い顔で迫ってくる仁奈ちゃん。

それにたじろぐ俺。

状況は拮抗している。


「……わたし、お兄さんのことが好きだったんです。小学生の頃は、本当のお兄さんのような意味での好きでしたが。中学生になった頃からは、男の人として好きになりました」

「そ、そうだったんだ……」


 俺のことを好きだと聞いて、素直にうれしい。

それはそうとして、今まで仁奈ちゃんのことは妹のように思っていたしな。

まあ、先ほどは成長した仁奈ちゃんにドキッとさせられたとはいえ。


「ねえ、お兄さん」

「な、なんだ?」


 仁奈ちゃんが一拍置いて、口を開く。


「……わたしじゃ、ダメでしょうか?」

「ーー!」


 仁奈ちゃんが上目遣いで、そう言う。

か、かわいい……!

ダメじゃない。

ダメじゃないがーー。


「し、しかし……。仁奈ちゃんのことは妹のように思ってきたし」

「こ、これからは、1人の女の子として扱っていただければだいじょうぶです」

「大学生の俺が、女子高生である君と付き合うのは、社会的にもギリギリアウトな気が……」

「け、結婚を前提にした真剣な交際ならだいじょうぶです。あの子も賛成してくれていますし」


 そうだ。

妹も、この件に絡んでいるのだった。


「な、何なら、わたしの両親にも紹介しましょうか? お兄さんのことは知らないわけじゃありませんし、きっと賛成してくれますよ」


 仁奈ちゃんがそう追撃してくる。

仁奈ちゃんの家族とうちの家族は、家族ぐるみの付き合いだ。

小学生の頃には、いっしょにキャンプや公園に行ったこともある。


 知らない間に、外堀が埋められていた。


「わ、わかった。まずは、清い交際から始めよう。それでいいか?」

「えへへ。もちろんいいですよ。よろしくお願いしますね」


 仁奈ちゃんは満足そうにそう言って、引き下がった。

とりあえずの脅威は去った。


「さ、さっそく、来週の予定を考えましょう。このゲームの続き? 映画鑑賞? 遊園地? 楽しみですね」


 仁奈ちゃんが来週の予定をもう入れようとしている。

可愛い女の子に好かれて、もちろん俺も満更ではない。

満更ではないが……。


 グイグイ来すぎだよ!

もう少し落ち着いて考える時間をーー。


「お兄さん。何を他人事のような顔をしているのですか? いっしょに来週の予定を考えましょう」


 このグイグイ来る妹の友だちに、俺は翻弄されていくことになるだろう。

そんな予感がする。

だが、それも悪くないような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。