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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第三章 魔剣舞闘会
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人魔境界戦地帯

 幾多の戦を経て、荒れ果てた大地と化した北方国境。通称、人魔境界戦地帯。


 獣王都にて、ジャックたちにその事態が伝達される時、既に、魔王国軍は、獣王国ばかりか、王国、帝国に隣接する人魔境界戦地帯に建設された人類(プライミッツ)の最大の砦、星宮獣帯(ゾディアック)とすぐにでも、開戦できる位置にあった。


 星宮獣帯は、十二の砦を要に、占星魔術(アストロロギア)を中心とした魔術的位置関係をもって、建設された長城壁。並大抵の魔術では、破壊すること叶わず、武器の行使などもってのほか。無駄以外の何ものでもない。魔術王の時代に紡がれし、神代の遺構。彼の邪神の眷属を阻みし、難攻不落。

 しかし、時とともに、劣化した。魔術王のメンテナンス無くして、成り立つ筈もない超理論の基に組まれた防衛装置のその機能の殆どは覚めぬ眠りについている。それでも、人類は、この砦を絶対の物にして、今日まで魔族との均衡を維持してきた。


 今日また、人類の存続を懸けた防衛戦が、この地にて、執り行われようとしていた。


 人類圏の外。魔族たちの楽園。すなわち、魔境の大地。砦より、見渡す限りのその軍勢は、異様にして威容を放つ大怪異。観測兵が本陣らしき場を確認すれば、堂々と佇む武者甲冑の鬼が見えたことだろう。

 今まさに、魔族たちへと号令が掛けられる。


 鬼の右腕が高々と掲げられ、いくつかの言葉を吐くように、口許が動き、そして、空を割らんばかりの大音声が、魔族たちの鬨の声が響き渡る。


 星宮獣帯の要、十二の砦に配置された精鋭たちに萎縮する気配無し。威勢如きで、我らが神代の遺構が崩されることはありはしないと自信に満ち溢れ、指揮官の激励に、人類もまた、鬨の声を響き渡らせた。


 振り下ろされる鬼の剛腕。弾かれるかのように、否、実際その(かいな)は追い風を生み、魔族の軍勢が突撃を開始した。


「法撃隊、前ぇ!!」


 人類の指揮官の号令に、最低でも、金級冒険者程度の実力を有した魔術師たちが位置に着く。魔力が高まり、一人では決して、為し得ぬ大魔術が装填される。


「まだだ!まだ、撃つな!引きつけろ!引きつけるんだ!できるだけ多くの敵を灼かねばならん!」


 大魔術の有効射程範囲内に、できるだけ多くの魔族を集めるため、行使はギリギリにて行う。強烈な緊張感に、皆、沈黙を選び、指揮官の待機指示だけが響き渡る。


 高まる魔力にも、一切の恐怖を見出さず、魔族の軍勢は土煙を上げながら、突撃を続ける。


 さぁ、いよいよ、初手が放たれる。


「放てぇ!!」


「「「「「【聖炎(ホルス)()神爆(イグニス)()其は煉獄(インフェルノ)】」」」」」


 魔族たちのの元へと放たれた、あまりにも極小の熱球。それが持つ威力は絶大。魔王国軍の僅か上空。あまりの焼気に歪む空間を眺め、多くの魔族が視覚を喪失した。その()()()()だけでも、充分。されど、その魔術が、止まることはない。次のプロセスが発動する。熱球に閉じ込められたエネルギーが、圧縮された炎熱が解放された。


 ーーーー!!!!!!!!!!!


 あまりのことに、音を聞くことはなかった。神聖魔術(サクラメント)、人類を祝福する魔術体系で編まれているからこそ、その様子をこんなにも間近で観察することができる。自然を捻じ曲げる精霊魔術(シャーマニズム)だけでこんな規模の爆炎魔術を行使すれば、狭き世界は閉ざされよう。


 木々を焼き飛ばし、灰塵すらも残さぬ熱波が人類に到達するなれば、暖かきそよ風に変貌する。


 焼滅した空気を求めて、空間が息を吸う。目一杯吸った。それだけで、間合いを外れていたはずの魔族までも引き摺り込む。やがて、限界を超えた吸気は、盛大なる呼気へと変わり、大地を刷新した。二度、三度、規模を縮小しながら、魔族を灼き喰らい、やがて、赤熱化した大地も硝子状に固まった。


「やった……」


 呆然と呟かれたそれは、誰のものか。神聖魔術と精霊魔術、二つの異なる魔術体系を複合して行使された大魔術儀式。その結果は、威力は、絶死と言って差し支えない筈なのに、呟いた彼は、嫌な気配を感じていた。


 硝子状に固まった大地の中心。すなわち、あの大魔術の威力が最も伝わってであろう位置。影が見えた。否、闇が見えた。漆黒のコートを纏い、さらに深き(くろ)の糸で施された刺繍。髪は黒く、瞳はすべて暗く、肌だけが白。純白と言っていいだろうほどの白皙。彼の者の白は、光の白では無く、虚の白。実在するためだけに白いのであり、その真体はおそらく無色。


 弧を描く口許、恐ろしく整った尊顔。彼の者の背後に跪く数多の軍勢。


「ま、魔王……!?」


 其は、神の定めし天敵。勇者にしか倒し得ぬ絶対悪。


『此度の戦、我の預かり知らぬ所で、開かれた。謝罪しよう、人類諸君。だが、一度、始めてしまったものは治まらない。一度引く。だが、半年後に再びの開戦としよう』


 一国の王にしては、やけに丁寧な口調。その声に含まれる覇気は、正しく魔王。口調など、些事でしかない。有無など問われていない。それは、歴とした宣戦布告。


『勇者のいない諸君に、興味は無い。宿命の奴隷たる我を傷つけ得るは、勇者のみ。蹂躙は望まぬ。対等なる戦をしよう』


 そんな言葉を最後に、闇が消える。軍勢もまた、いつの間にか、消えていた。


 ……。


 ジャックたちが、最初の報告を受け、その後、王国と帝国にも、侵攻が為されていることを報告されたさらに、後日。


 魔王の降臨に、法皇は勇者召喚の儀式を準備するため、早急に帰国。アデル王も女帝も、やはり自国を心配して、帰国した。

 ジャックの企みは、法皇の承認によって成立。とある依頼を受けることとなった。その依頼内容が、魔王の降臨によって、変化したのか、していないのかは、法皇のみ知るところであった。


 猶予は半年。次なる人魔大戦まで、時間は残されてはいない。

 拙作は、ネット小説大賞第8回の一次選考を通過しました。やったーー!!

 たぶん、二次でおちるかもだけど、応募してみるもんだねぇ。


 この話で、第三章はほぼ終わり。後、一話、二話入るかもしれないけど、ホントのホントの繋ぎみたいな話になると思う。一応、三章までで、一部といった感じなので、一つの区切りということで、書き溜め期間をつくるかも?まぁ、こちらとしても、リアルな事情もありますしねぇ。

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