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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
9/139

作業

 あれから、体感で一週間ほど。ようやく、第二階層の大半を探索し終えた。あとは、通路が一つ。別にすべてを回ろうとは考えていなかった。運悪く、ハズレを引き続けた結果だ。


 俺のレベルは13のまま。セイも10でストップしている。どうやら、この階層の敵では、絶対量か質が足りないようだった。セイについては、俺の従魔(ファミリア)なので、俺の進化と同時に進化でもするのだろう。たぶん、主人より強くならんのだ。


「チッ?」


 黙考している俺を、心配げに見るセイ。俺はそれに対して、心を軽くしながら、その小さな体を撫でてやった。


「チッチッ♪」


 ご満悦のようだ。


 ……。


 最後の通路の奥。そこにはやはり、広間があった。だだっ広いそこには、無数の屍鬼(ゾンビ)の気配。今は、地面の下に潜んでいるようで、障害なく奥を見ることができる。扉があった。

 おそらく、この無数の気配を倒すまでは開かないだろう。


「セイ」


 名前だけを呼び、言外に告げる。


「チッ」


 セイは正確にその意を図り、現状、最大規模の浄化の青白い魔力を放った。


 それが開戦の合図だった。


 ドン!


 と地が陥没したのではないかというような音を置き去りにして、飛び出す。

 浄化によって、広間前方の屍鬼たちはすでにただの屍と化していた。しかし、正の魔力に本能的な恐れを抱く奥に潜む屍鬼たちが次々と飛び出してくる。


 俺は最も手近にいたそれに対して、無造作に隕鉄(メテオライト)の愛剣を振るった。抵抗は無い。錆を払い、当時の輝きを取り戻したそれはあっさりと人だったモノの肉と骨を断ち斬った。


 俺はそれに見向きもせず、次の獲物に取り掛かる。背後では、俺が飛び出すと同時に、地面に降りたセイが飽きもせず、食事を始めていた。


「……」


 呆れの念を抱きつつも、機械的に無数の屍鬼を再びの最期におくる。

 体感で、一時間かそこら。おそらく、実際には、三十秒程度だろう。


 ザッと血払いの一振りをして、残心。

 俺は強くなったということを感慨深く、想っていた。


 なんせ、退屈だった。欠伸まじりの作業は、デスクワークに近いところがある。凝り固まった身体を解したときに、何とは無しに確認した時計の進みの遅いこと遅いこと。早く定時になることを待ちながら、要領の良かった俺は、延々とどうでもいいことを考えていたに違いない。まぁ、そんなことは覚えていないのだが……。


「チッ!?」


 俺が一人黙考していると、セイが慌てたように駆け寄ってきた。


「どうした?まだ、食事の途中だろ」


 その様子を不審に思い尋ねるも、俺は返事を待たず、すでに異変を感じ取った。


「これは……」


 周囲を可視化できるほどの負の魔力で覆われている。それはこの広間全体にあって、屍鬼の成れの果てを包み、果ては俺たちにまで手を伸ばしてきた。


「チッ!!」


 しかし、それはセイの正の魔力によって弾かれる。

 諦めたように、負の魔力は、セイの食べ残しや未だ倒れたままの屍鬼を覆い、徐々にそれを一塊にしていく。


 なるほど。物量だけだったから不審に思ってたんだ。これが本番。


 第二ラウンドというわけだ。

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