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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第三章 魔剣舞闘会
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準決勝・第二試合

『続いて、第二試合を始めるぞぉ!!』


「「「「「ウォォォォオオオオ!!!」」」」」


 ジャックたちの退場後、すぐさまに第二試合が進行される。


『それでは、役者に登場してもらおう!!準決勝・第二試合!「龍槍」リシ・ヨブニータvs「氷麗姫(つららひめ)」シトナ・イカーム!!!』


「「「「「ウォォォォオオオオ!!!」」」」」


「「「お姉様ぁあ!!!!!!」」」


 大歓声が轟く。


 その中を、二人は堂々と登場した。


 片や、剛槍を担ぐ龍人。寡黙にして、熱き闘志を宿す武人である。

 片や、大弓を握る暗森人(ダークエルフ)鉄仮面(ポーカーフェイス)の美しき狩人である。


 双方、自然体にて、間合いを空ける。


「よろしく頼むよ、シトナ嬢」

「えぇ、よろしく」


 短い挨拶。それだけだった。後に残るのは、気迫。己が勝つという絶対の自信のみ。


 リシが剛槍を右手で握り、構える。

 シトナが大弓を右手で構え、左手で弦を摘む。


 両者の様子に静まり返る観客席。

 司会の吸気の音だけが響いた。


『魔剣大会、準決勝・第二試合開始ぃ!!!』


「【凍てつく雪原(フリーズ・フィールド)】」


 シトナの魔術宣言により、石舞台が氷床に覆われてゆく。

 リシは逃げるでもなく、片足を持ち上げ、一気に踏み落とした。


 ただの蹴りとは思えないほどの轟音を響かせて、リシの周囲を凍てつかせるはずだった氷床が吹き飛ばされる。


 それを見ても、眉一つ動かさず、シトナはギリギリと弓弦を引き絞った。


 風切音を響かせて、氷柱の矢が連続して、リシに襲い掛かる。

 しかして、そのすべてが剛槍によって弾き落とされ、さらには、リシはシトナへと近づいてゆく。

 もちろん、シトナとてその場に留まるような愚は犯さない。氷床を滑るように動いて、リシから遠ざかりながら、なるべくリシの死角に入るように動いた。


 一際、大きく踏み込んで、氷床で滑るどころか、それを踏み砕いてのリシの急接近。


「……!?」


 シトナの鉄仮面は崩れないが、驚愕の気配が伝わった。


「ぬん!」


 剛槍の薙ぎ払いが、襲い来る。異常な重量が遠心力によってさらに強化され、龍人の剛腕によって完璧な制御の下にそれはある。


 後ろに跳躍、さらには、仰反ることで、紙一重の回避。普通ならば、体勢を崩すところ。しかし、暗森人のしなやかな肉体が驚異の平衡感覚を発揮する。仰け反ったままに放たれた曲射が、剛槍に引っ張られて動きの鈍いリシに襲い掛かる。


 落下速度による加速もあるそれを、リシはどうにか剛槍で弾き飛ばした。


「……武を極めし者ならば、あのくらい生身でも受けれたでしょうに」

「なに、それは相手に失礼というものだ」


 仕切り直しとばかりに、両者睨み合う。動いたのは、当然、間合いを詰めねばどうしようもないリシである。


 氷床を踏み砕くほど、一歩一歩に力を込めて、走り抜ける。

 シトナとて、ただ待つなどいうことはしない。氷柱の矢による牽制は、すべて剛槍によって弾かれる。


「【氷嵐(ブリザード)】」


 踏み砕かれた氷床、弾かれた氷柱が一斉に、リシに襲い掛かった。

 中の様子は、伺いしれないほどの氷の嵐。しかし、剛槍を振るい、氷を弾く音が響き続ける。


 その様子に、次の手の必要性を感じて、シトナは魔力を高めてゆく。


 嵐が過ぎ去った後、リシは背後を剛槍にて薙ぎ払った。それ当然、先の試合で得た情報によるもの。

 しかし、シトナはそこにいなかった。


「二度同じ手を使うわけがない」

「呵呵呵呵呵!!いや、これは一本取られたわ」


 愉しげな笑い声の後、リシが浮かべたのは獰猛な笑み。シトナは、相変わらずの鉄仮面で、新たな魔術を宣言する。


「【樹氷森林(マローズニィ・レス)】」


 氷床に覆われた石舞台より、複数の巨大な氷柱が伸び育ち、やがて、枝を作り、木々の如き姿を形成する。それはまさに、樹氷の森林。狩人の領域である。


 シトナは跳躍して、一本の枝に飛び乗る。空いた左手を掲げ、リシに対して振り下ろせば、樹氷の枝が氷柱の矢となり、襲い掛かる。


「むぅ!?」


 弓で射る時とは、比べようもないほどの物量攻撃。流石のリシも呻き声を上げた。しかし、それでもなお、急所を外すことだけは失敗しない。


 枝は、発射されるそばから、新しく形成され、攻撃の間はあってないようなもの。シトナも一箇所に留まらず、枝を渡り跳んで、弓での攻撃も重ねている。


 このまま、押し込むかに見えた第二試合。だが、相手は、人類(プライミッツ)最強と名高い龍人である。物量如きに負けるわけもなかった。


「喝!!!」


 気合一声。ただそれだけで、氷柱の矢が吹き飛んだ。


「なっ!?」


 これには、シトナも驚愕の声。ただ、相変わらずの鉄仮面。

 その隙を突いて、リシの力強き踏み込みが実行される。氷床どころか、その下の石舞台すらもひび割れた。


 シトナとて、負けるつもりはない。動き回り、自身に近づこうとするリシに牽制の枝矢を雨霰と降り注がせる。

 すべては剛槍に弾かれて、シトナも一旦別の枝に逃げようとしたところ。


「喝!!!」


 またもやの気合一声。ただそれだけで、矢玉は吹き飛び、気迫に呑まれたシトナの動きが止まる。

 地が揺れかねない跳躍。シトナの佇む枝にリシもまた、飛び乗って、その剛槍を突き入れた。


「っ!?」


 死を覚悟したシトナの眼前で、剛槍の穂先は停止した。


「……参りました」


 弓を下ろしての敗北宣言。それにリシは、笑みを浮かべた。剛槍がリシの肩に担がれる。


『勝者ぁあ!!リシ・ヨブニィィィィイタァァァァァアアア!!!!!!』


「「「「「ウォォォォオオオオ!!!!」」」」」

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