準決勝・第二試合
『続いて、第二試合を始めるぞぉ!!』
「「「「「ウォォォォオオオオ!!!」」」」」
ジャックたちの退場後、すぐさまに第二試合が進行される。
『それでは、役者に登場してもらおう!!準決勝・第二試合!「龍槍」リシ・ヨブニータvs「氷麗姫」シトナ・イカーム!!!』
「「「「「ウォォォォオオオオ!!!」」」」」
「「「お姉様ぁあ!!!!!!」」」
大歓声が轟く。
その中を、二人は堂々と登場した。
片や、剛槍を担ぐ龍人。寡黙にして、熱き闘志を宿す武人である。
片や、大弓を握る暗森人。鉄仮面の美しき狩人である。
双方、自然体にて、間合いを空ける。
「よろしく頼むよ、シトナ嬢」
「えぇ、よろしく」
短い挨拶。それだけだった。後に残るのは、気迫。己が勝つという絶対の自信のみ。
リシが剛槍を右手で握り、構える。
シトナが大弓を右手で構え、左手で弦を摘む。
両者の様子に静まり返る観客席。
司会の吸気の音だけが響いた。
『魔剣大会、準決勝・第二試合開始ぃ!!!』
「【凍てつく雪原】」
シトナの魔術宣言により、石舞台が氷床に覆われてゆく。
リシは逃げるでもなく、片足を持ち上げ、一気に踏み落とした。
ただの蹴りとは思えないほどの轟音を響かせて、リシの周囲を凍てつかせるはずだった氷床が吹き飛ばされる。
それを見ても、眉一つ動かさず、シトナはギリギリと弓弦を引き絞った。
風切音を響かせて、氷柱の矢が連続して、リシに襲い掛かる。
しかして、そのすべてが剛槍によって弾き落とされ、さらには、リシはシトナへと近づいてゆく。
もちろん、シトナとてその場に留まるような愚は犯さない。氷床を滑るように動いて、リシから遠ざかりながら、なるべくリシの死角に入るように動いた。
一際、大きく踏み込んで、氷床で滑るどころか、それを踏み砕いてのリシの急接近。
「……!?」
シトナの鉄仮面は崩れないが、驚愕の気配が伝わった。
「ぬん!」
剛槍の薙ぎ払いが、襲い来る。異常な重量が遠心力によってさらに強化され、龍人の剛腕によって完璧な制御の下にそれはある。
後ろに跳躍、さらには、仰反ることで、紙一重の回避。普通ならば、体勢を崩すところ。しかし、暗森人のしなやかな肉体が驚異の平衡感覚を発揮する。仰け反ったままに放たれた曲射が、剛槍に引っ張られて動きの鈍いリシに襲い掛かる。
落下速度による加速もあるそれを、リシはどうにか剛槍で弾き飛ばした。
「……武を極めし者ならば、あのくらい生身でも受けれたでしょうに」
「なに、それは相手に失礼というものだ」
仕切り直しとばかりに、両者睨み合う。動いたのは、当然、間合いを詰めねばどうしようもないリシである。
氷床を踏み砕くほど、一歩一歩に力を込めて、走り抜ける。
シトナとて、ただ待つなどいうことはしない。氷柱の矢による牽制は、すべて剛槍によって弾かれる。
「【氷嵐】」
踏み砕かれた氷床、弾かれた氷柱が一斉に、リシに襲い掛かった。
中の様子は、伺いしれないほどの氷の嵐。しかし、剛槍を振るい、氷を弾く音が響き続ける。
その様子に、次の手の必要性を感じて、シトナは魔力を高めてゆく。
嵐が過ぎ去った後、リシは背後を剛槍にて薙ぎ払った。それ当然、先の試合で得た情報によるもの。
しかし、シトナはそこにいなかった。
「二度同じ手を使うわけがない」
「呵呵呵呵呵!!いや、これは一本取られたわ」
愉しげな笑い声の後、リシが浮かべたのは獰猛な笑み。シトナは、相変わらずの鉄仮面で、新たな魔術を宣言する。
「【樹氷森林】」
氷床に覆われた石舞台より、複数の巨大な氷柱が伸び育ち、やがて、枝を作り、木々の如き姿を形成する。それはまさに、樹氷の森林。狩人の領域である。
シトナは跳躍して、一本の枝に飛び乗る。空いた左手を掲げ、リシに対して振り下ろせば、樹氷の枝が氷柱の矢となり、襲い掛かる。
「むぅ!?」
弓で射る時とは、比べようもないほどの物量攻撃。流石のリシも呻き声を上げた。しかし、それでもなお、急所を外すことだけは失敗しない。
枝は、発射されるそばから、新しく形成され、攻撃の間はあってないようなもの。シトナも一箇所に留まらず、枝を渡り跳んで、弓での攻撃も重ねている。
このまま、押し込むかに見えた第二試合。だが、相手は、人類最強と名高い龍人である。物量如きに負けるわけもなかった。
「喝!!!」
気合一声。ただそれだけで、氷柱の矢が吹き飛んだ。
「なっ!?」
これには、シトナも驚愕の声。ただ、相変わらずの鉄仮面。
その隙を突いて、リシの力強き踏み込みが実行される。氷床どころか、その下の石舞台すらもひび割れた。
シトナとて、負けるつもりはない。動き回り、自身に近づこうとするリシに牽制の枝矢を雨霰と降り注がせる。
すべては剛槍に弾かれて、シトナも一旦別の枝に逃げようとしたところ。
「喝!!!」
またもやの気合一声。ただそれだけで、矢玉は吹き飛び、気迫に呑まれたシトナの動きが止まる。
地が揺れかねない跳躍。シトナの佇む枝にリシもまた、飛び乗って、その剛槍を突き入れた。
「っ!?」
死を覚悟したシトナの眼前で、剛槍の穂先は停止した。
「……参りました」
弓を下ろしての敗北宣言。それにリシは、笑みを浮かべた。剛槍がリシの肩に担がれる。
『勝者ぁあ!!リシ・ヨブニィィィィイタァァァァァアアア!!!!!!』
「「「「「ウォォォォオオオオ!!!!」」」」」




