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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第三章 魔剣舞闘会
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空から女の子がなのじゃ!?

 城の中に、足を踏み入れれば、そこら中に蜘蛛の巣が、なんてことはなかった。そもそも、人蜘蛛(アラクネ)は、造網性ではない。


「おや、帰って来たんか。お帰り」


 相変わらず、さらしだけ巻いた姿のシュテンが、ちょうど良く?奥から出てきた。


「あぁ、ただいま」

「ただいまなの」


 俺とヤトが挨拶を返して、他の者は周囲をキョロキョロと見ていたり、ララに餌付けされているセイが見えたり、俺の後ろに張り付いていたり、億劫そうに欠伸をしたりしていた。


「どうだ?ここでの生活は、何か不便があったか?」


「いんや、今のところはありゃしないよ。あちきらの生活が、変わった感じはないからねぇ。あぁ、だが……」

「ちょっと、避けるのじゃぁああ!?」


 シュテンの言葉に割り込んで、上から降ってくる必死の叫び。

 見れば、これまた、さらしだけ巻いた姿の、まぁ、豊満なシュテンと違い、こちらは色々と小さいが、ともかく、一人の人鳥(ハーピィ)がこちらに突っ込んできていた。


 魔力操作(マナ・コントロール)・派生技術【障壁(ウォール)


「へぶしっ!?」


 透明な薄紫の壁にぶつかって、強制的に止められた人鳥は、けったいな呻きを上げて、よろよろとこちらまで飛んできた。


「う〜、もっと、優しく止めてくれなのじゃあ〜」


 下半身が猛禽類のそれであるため、床に立つことに違和感があるのか、滞空したままそう文句を垂れる。


「馬鹿言うな。なんしが、城の中で、あんな勢いよく飛び回るのが悪いんじゃろが」


 呆れ調子のシュテンの言葉に、先程の言いかけたことがおそらく、こいつについてなのだろうと何となく悟った。


「シュテンは、頭が固いのじゃ!ヤタカは捕まっていた分、色々なところを飛び回りたいのじゃ!例え、それが屋内であっても!」


 ……うん、アホだ。


『個体名:ヤタカ Lv.21

 分類:亜人(デミ・ヒューマ)

 種族:人鳥     』


『人鳥:(いにしえ)の時代、錬金魔術(アルケミー)の非人道的実験によって生まれた合成獣(キメラ)が、魔力の影響によって種族として成立した亜人。人と同等の知能を有するはずだが、鳥と合成されているためか、常識人には理解不能な自由人が多く、社会から弾かれた。女性体しかおらず、不老であるが、人型の男を使って数を増やすことができる。手がないため、【念動(キネシス)】に種族全体で高い適性がある。』


 これで一応、ヤタカは人鳥たちの長である。助けた時も、率先して動いていたので、リーダーとしての素質はあるのだろうが、まぁ、種族全体がこんな感じである。おそらく、率先して動いているからこいつがリーダーなのであって、人望とかで選ばれたわけではないだろう。


「ヤタカ、ここでの生活に何か、不便はあるか?」

「うん?おぉ、ジャックではないか。お帰りなのじゃ!」


 今気づいたのか……。


「不便はないのじゃ!シュテンの奴が小煩いが、それ以外は快適なのじゃ!」

「煩いんは、なんしじゃ、ヤタカ。なんしがもう少し、大人しかったら、あちきだって、煩く言わんわ」

「だから、シュテンは頭が固いのじゃあ!!」

「その調子で散歩に行って、この前、蛮鬼(オーク)の群れにちょっかいかけて、追いかけ回されとったんは何処のどいつや思うとるんや!あちきらは、居候の身やぞ、結局、ギラのアニサンに世話になっとったやろう!」


 聞き分けのないヤタカに、遂にシュテンも怒鳴り上げる。

 てか、ヤタカ、蛮鬼にちょっかいかけたのか……。


 そのまま、いがみ合うシュテンとヤタカを眺めて、しばらく皆、ボーッとしていた。


「仲が良いわねぇ、ふふふ」


 エリーさんの一言が、やけに心に響くのだった。

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