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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第三章 魔剣舞闘会
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ギドラ

門番の登場!

「「「お帰りなさいませ、主、我が君、ご主人様(マイ・マスター)」」」


 【転移門(ゲート)】を潜れば、目の前には男女三人の姿と声。俺から見て、左からガタイのよい男、初老の男、若い女だ。


 男二人は、脚を揃え、右手を胸の前に、左手は身体に揃えて、女は、やはり脚を揃えて、臍のあたりで左手を上にして両手を合わせ、もちろん、三人とも指は真っ直ぐに揃えられ、腰から頭と身体を下げていた。辞儀動作は三拍で行われ、素人目にも美しく映る。


 その服装や容姿を言えば、男二人は、髪型をオールバックに、執事(バトラー)服と言われる燕尾服で、黒の上着とズボンに白のシャツ、紺の蝶ネクタイを締めており、足元には白い靴下と磨きぬかれた黒い革靴。初老はうまく着こなしているが、もう一人はガタイがよく窮屈そうだ。

 女は、髪型をロングストレートに、女中(メイド)服と言われるエプロンドレスで、黒のドレスに白のエプロンとヘッドドレスをつけ、足元にはやはり白い靴下と磨きぬかれた黒く低めのヒールをもつローファー、スカートの裾は長く、全体的に露出は抑えられている。しかし、メリハリのある肢体を隠せてはいなかった。

 三人に共通するのは黒髪黒目であり、総じて美形であること。初老の男は涼しげに、ガタイのよい男は荒々しく、女は清楚な美貌を誇った。


「うわぁ……」

「あらあら……」

「……え?」


 カーラ、エリーさん、イジネの反応は三者三様。惚けて、艶然と微笑んで、フリーズした。


「あぁ、ただいま」

「ただいまなの、ギドラ」

「チッ」


 一方、その存在を知る俺たちは、迎えの挨拶に軽く応える。


「はい、我が君。貴方様のお帰りをこのドラ、心より待ちわびておりました!」


 ズイッと前のめりになって、そう言ったのは初老の男。この中で一番できる風な見た目ではあるが、まぁ、重度の主コンである。


「はいはい、あんたはいつもそれだな。主の迷惑だ、離れろ」


 そう言って、ドラの肩を掴むのは、ガタイのよい男。


「ギラ!なんだその口のきき方は!我が君の前だぞ!」


「ギラ、言うだけ無駄です。ドラはご主人様のご命令だけを受け取るのですから」

「……ちっ。そうだな、確かに、ララの言う通りだ」


 若い女の言葉に、舌打ちしてギラは退がった。


「それで、我が君!今回はどのくらい滞在して頂けるので!?」


 前のめりに聞いてくるドラを、ドウドウと宥めながら、答えてやった。


「まぁ、何かの用事がない限りは暫く滞在する。それで、お前ら、俺の連れに挨拶はなしか?」


 俺の返答に、頬を紅潮させるドラであったが、最後の言葉にハッとして、背筋を伸ばした。ギラとララのほうもそれに続いた。


(わたくし)は、我が君の第一の臣下、ドラと申します。以後お見知り置きを」

「俺は、まぁ、ドラと似たようなもんだが、ギラと言う。よろしくな」

「わたしは、ご主人様の専属メイドであるララです。よろしくお願いします」


 三者三様の挨拶。それを受けて、カーラたちも口を開く。


「わ、私は、カーラ・ブラッドローズです。よろしくお願いします」

「エリー・ブラッドローズよ。カーラの母になるわ。よろしくね」

「イジネ・テテジーラだ、よろしく頼む」


 こちらも三者三様だった。


「あの、よろしいでしょうか?」

「何かしら?」


 ドラの問いかけが、エリーさんに向けられた。


「失礼ながら、エリー様は我が君の血族であられますか?」

「えぇ、そうよ?」

「では……!エリー様は、我が君の伴侶……」

「それは違うぞ、ドラ」


 感極まったかのようなドラの言葉に、食い気味の言葉を被せる。


「し、しかし、エリー様は我が君の血族だと!?」

「そうだな、確かに血族だ。だが、それはカーラと生きていくための措置に過ぎない。血族関係を家族関係に例えるなら、エリーさんは妹だ」

「そ、そうでございますか。失礼致しました。それでは、そろそろ我が君の城の方へと入りましょう」


 ドラは残念そうにしながらも、俺の言葉は絶対であるので、それ以上食い下がることもなく、歩き始める。


「ドラ、そのことなんだがな」

「はい?」

「何故、あの寂れた地下墓地の入り口が、立派な城になっているんだ?」


 ポツンと、周囲の地面から若干盛り上がり、入り口となる穴を開けているだけだったはずのところには、それそれは立派な白亜の城が。

 俺の記憶が確かなら、穴のあった辺りは、宮殿のような建物が建築され、その周囲には、様々な高さの塔が建っていた。


 いや、うん、おかしいだろう。内部は散々弄ったが、外装には手を加えてないぞ、俺は。


「それはもちろん、我が君にふさわしい城をと思いまして、知り合いの錬金の精(レプラコーン)に頼み込んで、建築させて戴きました。しかし、人鳥(ハーピィ)の方々が移住して来ましたので、急遽予定を変更しまして、塔には上空からの出入り口も設けております」


 錬金の精……。あぁ、確か、人の属性を宿す精霊の一種で、七人一組で召喚される幻獣(ファンタジア)。ものづくりの概念が具現化した存在とも言われる創造のスペシャリストか。


「ドラの旦那!!」


 ドラの言ったことを整理していれば、前方からの耳慣れない濁声。視線をやれば、髭もじゃで、屈強な小人の姿があった。錬金の精だろう。


「おや、どうしましたか?」

「どうしたじゃねぇ!仕事が終わったから、報酬を受け取りに来たんだろうが!!」


 錬金の精のその言葉に、ドラに思わず呆れた目を向ける俺たち。


「あなたたちへの報酬は、我が君の城を造る名誉です」


 ドラは、自信満々に宣った。


 いや、それじゃダメだろ。俺たちの心情は一致していた筈だ。しかし


「我が君だぁ?……確かに、報酬は貰ったな。じゃあ、帰るわ」

「はい、ありがとうございました」


 俺を観察して、錬金の精はあっさりとドラの【送還(リターン)】で帰っていった。


 ???


 まぁ、問題が解決したならそれでいいが……。


「ドラ」

「はい、我が君」

「今度から、勝手な行動は禁止な」

「……はい」


 褒められることを期待したのか、俺の言葉にドラは明らかに気分を沈めてしまった。

ドラが当初と違う!?見た目通りのできる奴設定だった筈なのに!?


「ドラはできる奴だぞ?残念なだけで」


その残念感も初期構想には、なかったんだよぉ!


「ま、キャラの一人歩きはよくあることだ。気にすんな」


なるほどぉ……


まぁ、何はともあれ、応援よろしくお願いしまーす!


「次は、シュテンや人鳥の長との絡みらしいぞ」

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