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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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従魔

 輝きを取り戻した愛剣の調子を確かめるため、バッサバッサと遭遇する屍鬼(ゾンビ)やら病鼠(イルネス・ラット)やらを斬り刻む。

 調子良く、あっさりとそのすべてが斬り裂かれ、隕鉄(メテオライト)の剣は遺憾無くその力を発揮していた。


 この辺りの魔化物(モンスター)のレベルは、10を超えることがなく、俺のレベルもなかなか上がらないが、それでも13になった。


「……?」


 剣の調子を確かめ終えて、気分的に少し、休憩をしていると、なにやら今までと違う生命力を感知した。

 どこか、微弱なそれはおそらく、弱っていることを示しているのだろう。


 変化に乏しい迷宮(ダンジョン)探索だ。俺は、ほんの気まぐれと好奇心とでその生命力のもとへと向かって行った。  


 ……。


 俺の目の前にいるのは、一匹の鼠だ。ただ、病鼠どもと違い、その毛色は白く、目が赤い。アルビノというやつだろうか?

 そいつは、他のアルビノと同様、その奇異さから育児放棄でもされたのか、じっと体力の減少を抑えながらも、逃れられない死の運命をただ、待っていた。


 俺が近づいても、ピクリともしない様子は、完全にその生を諦めたものの反応だ。ただ、その瞳だけは俺のほうをジッと見ている。怯えか、一縷の希望か。鼠の感情など分からないが、それに似た思いは抱いているだろう。


 真理眼(イデア)


『個体名:No Name Lv.1

 分類:魔獣(ビースト)

 種族:清鼠(クリーン・ラット)    』


『清鼠:鼠が魔力の影響を受けて、魔獣と化した病鼠の繁殖によって産まれた突然変異体。病毒を祓い、縄張りを清めるチカラを持つ。』


 ……なんというか。屍霊(リビングデッド)の天敵のような奴だな。


 俺は、おもむろに剣を握り込み、自身の右腕の肉を少し削ぎ落とした。ちなみに俺は左利きだ。

 傷は、無限の胃袋のストックによって即座に回復する。


 落ちた肉塊を持ち上げ、清鼠に近づき、手に持つそれを口元へと近づけた。

 清鼠は一瞬の躊躇いののち、それをいそいそと口に含み、咀嚼し、飲み込み、また、口に含むのを繰り返した。


 ……。


 清鼠に餌付けをおこなって、体感で三日。清鼠は活発に行動できるようになった。今は俺の右肩で待機している。

 名前もつけてやった。セイと。かなり安直だが、気に入ってるようで、真理眼でもNo Nameの表記が消え、セイと表示される。


 二日目あたりで、俺を観察するような様子があったのだが、突如、前触れなく、俺とセイとの間に繋がりが形成された。なんというか、魂的な繋がりである。真理眼を意識すると、繋がりの糸が可視化できたので、真理眼を行使してみた。


『主従の繋がり:魔化物はごく稀に認めた相手との間に、魂の繋がりを形成し、従魔(ファミリア)となる。魂の繋がりは、主従双方に影響を与える。』


 そう、セイは俺の従魔となったのだ。そして、この影響という点で言えば、セイはどうやら無限の胃袋の特性を身につけたようである。俺が倒した屍鬼を丸々一体、その場で平らげていた。……少しグロかったな。

 だが、俺には現状、影響がない。まぁ、影響するとしたら、次の進化だろう。セイは清めのチカラを持つので、俺は屍霊を辞められることを密かに期待している。

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