獣王国
ほぼ、説明回。最後に、一応の箸休めを入れてみました。
ガルダニング獣王国。
四大国で、唯一の獣人族国家である。その文化は、武に始まり、武に終わるとまで謳われる武闘派集団の集まり。だが、その荒々しさは、義理人情に溢れた清々しさのある魅力あるものである。
獣人族の人口のほとんどを占めるのが、犬人と猫人。彼らは、元々、犬妖精や猫妖精と人間の混血児であり、外見上は、人間の姿に、耳と尻尾という獣の特徴だけを残した見た目をしている。長き時の流れの中で、一種族と言えるまでに、数を増やした。
そして、犬人同士、猫人同士の子には獣の血を強く目覚めさせた上位種がいる。狼人、狐人、狸人、獅人、虎人、豹人である。彼らは、皆、親よりも強き者であり、獣王国の建国にも大きな役割を果たした。
さらには、妖精としての血をも目覚めさせた覚醒種がおり、それは雹狼、狐火、雷狸、獅炎、雷虎、雪豹と呼ばれる。建国の折には、この六種がそれぞれ一人ずつ現れ、それぞれの群れを率いて、活躍を見せた。
そして、悲しい歴史を持つ者もいる。古の時代。その時代には、何よりも魔術の発展が望まれ、数多くの非人道的実験が横行した。その中でも、錬金魔術による合成獣の作成実験は、暴走する個体を作り、街を滅ぼしたり、時には、小国を滅ぼすような被害を出した。
そして、やがて、その材料には人間までもを使うこととなり、新たな種族を生み出す事になる。牛人、人馬、人蜘蛛、人鳥の四種族である。
彼らが、種族として成立した後の歩みはそれぞれ異なる。牛人と人馬は、人としての知能が失われず、獣人族の一員として人類に分類された。だが、人蜘蛛や人鳥は、何故か、男は軒並み拒絶反応を起こし、全滅。残された女性基盤の者たちも、記憶能力の欠陥や抑え切れない凶暴性から魔化物に分類され、人里離れた地に隠れ里を作り、暮らしている。繁殖には、時たま迷い込む人間の男を使うとか使わないとか。
また、ファンタジー世界で見られるその他の亜人には、人蛇や人魚もいる。しかし、彼女らは人狼と雌雄の関係にある魔女と同じく、雌雄の関係にある個体がおり、それぞれ、爬虫類と魚類が魔力に影響され変異した種族である。人蛇の雄は、蜥蜴人、人魚の雄は、魚人である。
最後に、この世界で最も人口の少ない希少種族の多くもまた、獣王国に所属している。
龍人だ。龍族と人間の混血児であり、爬虫類特有の瞳に、少し尖った耳、龍の尾を特徴とする。彼らは、総じて有り余る力を持て余しており、戦闘狂のきらいがある。
彼らの祖である龍族は、竜とは全く異なる存在だ。竜が魔化物であり、爬虫類の変異した存在であるのに対して、龍族は元よりこの世界にいた存在であり、四神の遣いともされる神聖な者。また、姿も竜がいわゆる西洋竜であるのに対して、龍族は細長い胴に四肢を持ち、鹿のような角を持つ東洋龍である。彼らの役割を人が知ることはないが、意外に好奇心旺盛で気まぐれに、人里に人の姿で紛れ込んでいることがあり、そこで人間と恋に落ち、子を産むことがあるのだという。
さて、このように、様々な種族で構成される獣人族の獣王国の歴史は、人間や妖精族、魔族よりも浅い。彼らが、一種族として成立したのは早くとも、古の時代であり、その後、国を持つに至るのにも長き時が掛かった。かつては、それぞれに里を持ち、妖精族と似た暮らしを送っていた彼らであるが、妖精族と違い、「気まぐれな隣人」ではない彼らには悪意が襲いかかりやすかった。当時からあった四神教会も黙認し、公然と奴隷狩りが行われたのだ。徐々に、追い詰められるなか、先に述べた覚醒種たちが同胞を率いて、反撃。やがて、群れるのではなく、人間と同じく、集団行動することを覚えた彼らは人間よりも優れたその身で、勝利を飾り、獣王国を建国するに至ったのである。
迫害された過去がある故に、牛人や人馬を快く国民に迎え入れ、人間よりも強靭な身を持つ故に龍人という戦闘狂も引き寄せられた。やがて、獣王国は他の人間の国家にも並ぶ大国となり、今に至るのだ。
……。
ということが、イカロスの蔵書から知れていることである。
俺たちは、カラカラと車輪を回す馬車に乗り、獣王国への道にいた。
馭者をやっているのは、カラグの所の執事であるセルバ、カラグの屋敷で俺にお茶を出した人狼である。実際の役割は、荒ごとに足してその他、雑務らしく、今回、獣王をはじめとした獣王国のお偉いさんとの交渉ごとに際して、お供をしてくれるらしい。まぁ、俺たちだけで行動して、王国と獣王国の関係を悪化させたくないとか、そんな感じの理由も含まれているだろう。
乗っているのは、俺、セイ、カーラ、エリーさん、イジネ。そして、エリーさんの膝の上でご機嫌な幼女。艶紫の長髪に、紫水晶のような瞳。汚れを知らぬような純白の肌に、露出の少ない漆黒乙女ファッションに身を包む美幼女。
「父様、考え事は終わった?」
じっとそちらを見ていれば、そう聞いてきた幼女。
「あぁ、終わったよ」
「じゃあ、ヤト、そっちに行っていい?」
「あぁ」
「ヤトちゃん、行っちゃうのぉ?」
今、膝の上に乗せているエリーさんが悲しげにヤトに問いかける。それに「母様、ごめんなさい」と言いつつも俺の膝上に移動するヤト。
そう、ヤトである。この幼女の正体は、夜刀姫の銘を持つ俺の愛刀。その自我を俺の造った魔動人形に移して、行動を可能にした状態である。ちなみに、この容姿は俺の趣味ではなく、ヤトが宿ると自然とこの姿に変化した。俺は、のっぺらぼうの器を造ったに過ぎない。さらに、ちなみに、本体である夜刀姫にも自我は残っている。いわゆる同期状態で、別行動も可能だ。元々が、刀なので刃物の扱いは一流剣士と同等かそれ以上で一人になっても問題はない。護身用に腕部には、神鉄と霊銀の合金である神霊鋼製の刃が仕込まれている。
魔動人形は本来、行動命令に従って、魔力を燃料に動く魔道具だが、それに武具とは言え、自我を移す仕組みをつくるのは苦労した。しかも、元に戻れる必要もあるので、さらに複雑になったのは良い思い出である。ちなみに、魔人形は、長時間稼働するのは不向きな即席な劣悪品なので、駄目である。
ヤトが俺に凭れ掛かり、期待するような目で見上げてくるので、それを察して頭を撫でてやる。それに嬉しそうにはにかんだのだろうが、生憎と俺には見えず、残りのメンバーが温かい目をして、ほっこりした様子がわかるだけだった。
かはっ……
私の性癖じゃない。そういう層の人を狙っただけなんだ!本当だ!だから、ころさないでくれ!
「ウチのヤトに妙な身体を与えてんじゃねぇ!可愛いじゃねぇか、ちくしょう!」
あ、はい。
感想よろしくお願いします。
「てめぇら、ヤトの悪口言ったら、ぶった斬るからなぁ!わかったか!」
ジャックさん、キャラ崩壊してますよ
「ウルセェ!」
かはっ……本当に……斬る……とは……




