宝箱
屍鬼の女性をもう一度、埋葬した後、また、ヒタヒタという気分で歩く。
……。
……。
……変わり映えのしない迷宮だな。流石に、飽き飽きする。
「お?」
そんなことを考えていると、角を曲がった先に扉があった。木造である。この階層は、周囲が土しかないので、違和感しかないし、そもそも土にどうやって、扉を嵌め込んだんだ?
近づいてみると、普通に木枠を嵌め込んで、扉を取り付けていた。これは、普通に蹴破れるのでは?
……まぁ、いい。俺は、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと押し開いた。
空いた隙間から覗いてみたが、敵の気配は無い。完全に開ききり、中に入った。
そういえば、ここは光源が一つもないな。俺は真理眼のおかげで見えているが。ホント、真理眼様様だな。
部屋は、大して広くない。狭苦しい行き止まりだ。ただ、その部屋の真ん中には、その存在を主張する箱が一つ。迷宮につき物の宝箱だろうか?
真理眼を行使。
『木造の宝箱:迷宮が生成するなんの変哲もない宝箱。木造は最もランクが低く、鍵や罠は無い。』
ふむ。……開けるか。
罠のないことはわかっているので、無造作に近づき、開く。中にあったのは、一つの小瓶。中身はどうやら液体のようだ。
なんだろうか?真理眼。
『手入れの薬瓶:武具を手入れすることができる魔法薬。これをかけた武具はたちまちに新品同様の輝きを取り戻す。』
……。木造はランクが低いのではないのか?まぁ、いい。錆び付いたこの剣にかけてみるか。
タラーリと、若干の粘り気を感じさせる液体が、小瓶から垂れ、錆び付いた剣にかかる。
すべてかけたところで、剣が発光し、思わず、目を背ける。
発光が収まり、視線を戻せば、剣は確かにその輝きを取り戻していた。
そういえば、この剣は調べてなかったな。
真理眼。
『隕鉄の剣:硬く重い魔金属、隕鉄によって、鍛えられた剣。魔伝導率は無いに等しく、力自慢の剣士向けの品。』
なぜ、この迷宮のアイテムは、そのランクが高いのだろうか?魔化物のランク上げろよ……。
こんなものか。さて、探索だ、探索。
俺は小部屋を後にした。