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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
52/139

もう一体

「ふむ、なるほど。しかし、よりにもよってグズダニア公爵か」


 今回の黒幕である公爵の名を、忌々しそうに口にするアデル王。


『どういうことだ、カラグ?』

『グズダニア公爵家は、代々、カルドニア王家に仕える重鎮。陛下の母君もグズダニアの出で、それは陛下の名前にジャネル姓のあることが示している』

『?そもそも、あんたらの名前はどういう法則でついてるんだ?』

『あぁ、王家は、名前、父方の姓、母方の姓、王国名の順で、貴族は名前、父方の姓、爵位名となっている』

『そ、それで、公爵家が重鎮だからどうなんだ?』


 脱線した話を、イジネの問いが修正する。


『現グズダニア公爵は、陛下の叔父、つまり、陛下の母君の弟になる。そうなると、血縁関係のある公爵を断罪するのは、難しい。他の貴族に、家族にすら、情を持たない王という印象を持たれるからな。そうなると、国家分裂の危機だ。公爵家に恩のある連中が、束になって反乱してくる』

『なるほど。アデル王としては、ことを穏便に済ませたいわけか。落とし所は、公爵が後ろ盾をやってる商会の摘発だろうが、悪い知らせだ』

『なんだ?』『な、なんだ?』

『魔術で、探査してみた結果、公爵家の屋敷の地下にも、捕まってる奴がいる。商会だけ摘発すれば、ことが解決するわけじゃない』

『まぁ、そうだろうな』

『私も、それぞれ事情があるだろうし、同胞が帰ってくるのなら、商会摘発だけでもよかったが、それでは困るぞ』


 さて、どうするか?国家分裂なんてどうでもいいで、済ませてもいいんだが。まぁ、アデル王が可哀想か。

 他の貴族が納得しそうなことねぇ。


「シャバニア卿、他の貴族の関連は?」

「いえ、それが全く。どうやら、グズダニア公爵のみで行っていることのようで」

「……一斉摘発もできんか」


 そうなんだよなぁ。他の貴族のとこには、捕まってる奴、いないんだよなぁ。どこに流してるんだか?


 ?これは……


『カラグ、公爵家に吸血鬼(ヴァンパイア)の反応がある』

『何?そう言えば、吸血鬼が用心棒に雇われているという話があったな』

『あぁ、事実がどうかは知らんが、取り敢えず、その線で攻めろ。吸血鬼の仕業となれば、反乱の大義名分は薄まるだろ』

『あぁ、わかった』


 この吸血鬼とは、カーラの母であるエリーさんのことではない。公爵の屋敷にあった負の気配はもう一つあった。エリーさんが個人的に雇われたのかと思ったがどうやら、そうでもないらしい。まぁ、二体いたことを伝える必要はないだろう。エリーさんのほうは、殺すわけにはいかないのだし。


「陛下、これは不確定な情報なのですが、公爵の側に吸血鬼の気配があります」

「なに?いや、そうか。ふむ、それならば、仕方ないな。叔父上を吸血鬼の魔の手から救い出さねば、ならんからな」


 吸血鬼の関与を提示され、アデル王があっさりと掌を返した。

 これは、王国の国教でもある四神教会の後ろ盾を得られるからだ。ソロモンの逸話にもあるように、屍霊(リビングデッド)は邪神の呪いで誕生したモノ。それの頂点の一つである吸血鬼に関わる事件は、どれだけ不確かな情報でも迅速な対処が求められる。その公正性が他の意見を押し潰して、認められるほどに。


 ふむ、これでイジネたちの同胞解放は実行に移すだけか。後は、エリーさんだが、他の人の目につくわけにはいかないからなぁ。誘いだす必要があるか。

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