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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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第二階層

 第二階層は、石造りであった第一階層と違って土が剥き出しとなっていた。なんというか、教会の地下墓地のようだった第一階層に対して、こちらは村落の共同墓地のような雰囲気である。

 ただ、迷宮(ダンジョン)のためか、通路といくつかの小部屋で構成されており、だだっ広いようなところではない。


 剣の感触を確かめながら、歩いていると気配とは別の感覚を感じ取った。これは、生命力だろうか?

 気配とは違い、どこかイラつきを感じさせる。ただ、生前に感じられれば、あたたかいと思えただろう。


 この世界に誕生して、初めての生物との邂逅である。俺はワクワクしながら、その時を待った。


 そして、そいつは角からひょっこりと顔を出した。


 最早、馴染みの真理眼(イデア)を行使。


『個体名:No Name Lv.6

 分類:魔獣(ビースト)

 種族:病鼠(イルネス・ラット)    』


『病鼠:鼠が魔力の影響を受けて、魔獣と化した魔化物(モンスター)。鼠の特徴をそのままに、病の運び手としての特徴が強化されている。』


 ふむ。病やなんかは屍霊(リビングデッド)である俺には効かないので、レベル的にも特に敵ではないな。

 大きさや姿は、ドブネズミだ。鼠としては、大きなほうだ。色が灰色であるので、たいして可愛くないという評価を受けやすいだろうか。俺は特に思うところはない。


 病鼠は、俺を視界に収めるとなりふり構わず、突っ込んできた。

 俺はそれに対して、剣を振り、あっさりとその命を散らした。


 ふむ、刃が潰れているので、頭が凹む程度でグロテスクにはならんな。刃筋を立てると少しはマシになるのか?要練習だな。


「……。……いただきます」


 俺は、病鼠の死体を一口で喰らった。

 味はわからないが、食感としては筋張った肉だ。血も一緒に飲んでいるが、特に何も感じない。爪や歯は結構硬いし、眼球のプチュという感覚は癖があるだろうか。

 ……味覚がないと骨が一番、美味しく感じるな。まぁ、触覚もないので、この感覚は生前のもので補完された錯覚のようなものだろうが。


「ごちそうさまでした」


 階層主によって、斬られた傷が回復していた。やはり、肉の傷には肉か。


 さて、進むか。


 ヒタヒタという気分で歩く。地面は土であるので、どちらかというとザクッという感じか。いや、それは靴を履いている場合か?そもそも、砂地での音だろうか?ふむ……。


 とくに意味のない思考で暇を潰しながら、ひたすらに歩く。途中、出会った病鼠はすべて美味しくいただいている。無限の胃袋に溜まっている感じがするので、多少の回復ストックになるだろう。


 若干、油断して歩いていると、ボコッとばかりに地面から腕が生えてきた。俺の真下であった。

 慣性のように、少し歩いたところで振り向くと、地面からすでに上半身までもが生えてきていた。真理眼を行使。


『個体名:No Name Lv.7

 分類:屍霊

 種族:屍鬼(ゾンビ)      』


『屍鬼:腐乱死体が、長い年月をかけて、負の魔力を溜め込むことで屍霊と化した魔化物。肉体が腐乱しているため、動きは鈍いが、脳の制限がなく、膂力は高い。他の屍霊族と同じく、生者を怨み、その生命そのものを感知することができる。』


 屍鬼か。しかし、屍霊は同族すら見境なく襲うのは何故なんだ。それとも、俺がはっきりと自我を持ってるせいで、生者と同等に見られてるのか?


 ふむ、内臓が見えてるな。流石にグロい。

 見た感じ、女性か?ふむ、多分そうだ。南無阿弥陀、南無阿弥陀。


 斬


 サッサと断首して、倒す。切断された首から、黒い光が溢れて、俺に取り込まれた。


 ……。


 流石に喰べる気は起きないな。埋めるか。


 また、屍霊になるかもしれんが、知らんよ。成仏しなさい。

 南無阿弥陀、南無阿弥陀。合掌。

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