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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
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守護霊

 宴も(たけなわ)を過ぎた頃。

 すでに、広場には夜の長い酒飲みたちしかおらず、女子供は家に帰っていった。


 俺も、空き家になっているという所に案内してもらい、魔術で軽く掃除してから干し草の敷き詰められたベッドで横になっていた。セイも机の上に拵えてやった専用のベッドで寝息を立てている。


 不死身である俺に睡眠は必要ないために、なんとなく目を開けたままでいた。


 コンコン


 ここに案内されてから、小一時間ほど経つだろうか、ノックの音が聞こえた。俺はセイを起こさぬよう身を起こし、玄関に出ると【念動(キネシス)】で扉を開いた。


「あ、お兄さん……なんで、そんな奥にいるんですか?どうやって、扉開いたんです?」


 訪ねて来たのは、カーラだった。確か、イジネの家に厄介になっているはずだ。


「魔術だ。まぁ、入れ」


 俺の返答に、(ものぐさ)だなーとかなんとか言いながら、カーラが家に入り、扉を閉める。俺たちはそのまま、居間にあたる部屋に向かい、そこの椅子に腰掛けた。


「どうした?」


「……お兄さんって、その……」


 煮え切らないカーラの言葉を黙って待っていると、やがて、はっきりと口を開いた。


「お兄さん、竜血華って知ってますか?」


「あぁ、知っている。てか、持ってる。なんだ、今、不安定なのか?」


「えぇ、はい。安心して気が緩んだのか、抑えるのが難しくて……」


 竜血華というのは、(ドラゴン)の死体に生える寄生植物の一種だ。竜から生えるそれは、魔草の類で様々な効能を持つが、その一つに吸血衝動をはじめとする負の魔力を抑える働きがある。

 つまり、カーラは今、吸血衝動に苛まれているのだろう。


「ほら」


 俺は、亜空(アイテム)()小袋(ポーチ)から竜血華の蜜で作った水薬(ポーション)の瓶を取り出して、机に置いた。


「ありがとうございます」


「それ、俺が調合したやつで、全部飲む必要はないからな」


「えっと、一回どのくらい?」


「一滴で充分だ。だから、瓶の出口もそういう風に加工してある」


 カーラとそんなやりとりをして、もう遅い時間だからさっさとイジネの家に帰す。


「おやすみなさい、お兄さん」

「あぁ、おやすみ」


 バタン


 カーラが帰路についたのを確認して扉を閉める。


 ……。


「出て来たらどうなんだ、なんか用があるんだろう?」


 俺がそう言えば、居間の机に一羽の梟が現れた。

 青白い羽を持つ梟は机から飛び上がり、俺の目の前まで来るとその姿を変化させる。


 光に包まれ、その輪郭を変えた姿は、黒髪黒目の一人の男。

 おそらく、人間(ヒューマン)だ。


『個体名:ホスロー

 分類:幻獣(ファンタジア)

 種族:守護霊  』


『守護霊:守護すべき存在を残したままこの世を去った者が、生まれ変わる幻獣。多くは孤児と生まれつき契約している。普段は獣の姿で過ごし、自身が契約者と特別な関係にあり、死別した者という正体は明かさない。契約者に明かせば、地母神によって冥府に連れ戻される。』


 レベルの表記がないのは、幻獣の特徴だ。主人の強さに幻獣の強さも依存する。ホスローはカーラの守護霊だ。つまり……


「ジャック君、はじめまして。私はホスロー。カーラの父親だ」


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