お人好し?
「俺の種族は、吸血聖人。負の生命でありながら、正の魔力をもその身に持つ吸血鬼の新種だよ」
とりあえず、今言える俺の種族を述べる。長老たちもイジネも困惑気味だ。吸血聖人が真理眼で確認したとおりに新種ならば、当然だろう。聞いたことがないことの真偽を確かめる術はない。
「カーラは知っていたのか?」
イジネの問いだった。
「はい、吸血人としても、お兄さんは吸血鬼です。しかし、本人の言うとおりに正の魔力を持っているので、他の吸血鬼とは違います」
「どう、違う?」
カーラのことに、代表が思わずといった様子で問いかける。
「吸血鬼の怪物的性格は、負の魔力に強く影響を受けています。ですから、それを正の魔力で打ち消すことのできるお兄さんは、その価値観が一般的な人類の理解できる範囲内に収まりますし、吸血の必要性がありません。吸血鬼である以上は、吸血衝動はあるのでしょうが、それだって正の魔力で抑え込むことができるでしょう。つまり、私と同じで怪物になるのはよほど人類を憎んでいる場合の話になります」
吸血人として、自然と身についたのだろう知識によった話は、長老たちも納得できるものであったようだ。どこか、安心した表情をしていた。
しかし、そういうことならば、カーラの母は……
「なるほど、つまり、吸血人が吸血鬼の能力をすべて受け継いでいるようなものか……」
「はい」
カーラの確信に満ちた表情に、長老たちは俺の扱いを悪くするつもりはないような雰囲気を出し始めた。
だが、これは聖なる魅了が働いている気がする。そもそも、能力が何段階か落ちる吸血人とそっくりそのままどころか、正の魔力でいくつかの弱点を克服している俺では前提が違う。怪物にならない確実な保証がなければ、普通は危険視されるべき存在だ。
「それにお兄さんは自覚がないかもしれませんが、負の魔力が怪物性を与えるように、正の魔力はその人に聖人性を与えます。ですから、お兄さんはお人好しなところがあるはずです」
「なるほど……」
「確かに……」
代表が頷き、イジネがお人好しを肯定した。
マジか。つまり、俺って損するタイプ?まぁ、良いや。無駄にスペックが高いから面倒事に首突っ込んでも、大事にはならないだろうし。
……いや、待てよ。
「カーラ、俺の魔力は正と負で釣り合ってるはずだ。どちらからも影響を受けないのではないか?」
「いえ、お兄さんはセイちゃんを従魔にしているので、正の魔力のほうが強いです」
「チッ?」
なるほど。
俺は、呼んだ?と顔を出したセイの頭を撫でてやる。
「チッチッ♪」
「お前のおかげで俺は、悪人にならずに済むんだとよ。ありがとな」
「チッチッ!」
セイの頭をもう少し、撫でていたかったのだが、代表の咳払いが聞こえたので、中断して向き直る。
「あー、それでだ。その瞳については?」
「いや、俺はこれについて何も知らない。逆に教えてほしいくらいだ」
「ふむ……それは、四神様の祝福の証だ」
そう言って、代表は話を始めた。