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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
33/139

長老

 長老の家は、巨木をくり抜いて作られていた。しかし、巨木は生きたままだ。

 開け放たれた扉には、好奇心旺盛な犬妖精(クーシー)猫妖精(ケットシー)森妖精(エルフ)の子供たちが団子になって、こちらを伺っていた。


「長老方、こちらは同胞解放の折に、助けていただいたジャックと、同胞と一緒に捕まっていたカーラです」

「チッ!」

「それと、ジャックの相棒であるセイです」


 イジネが端的に長老たちに説明するが、俺の右肩にいるセイが自分は?とばかりに鳴いたため、少し頬を染めた。


 長老たちは、見た目にも老齢で、フサフサの白い髭を蓄えた男性が三人、未だに背筋のシャンと伸びている女性が二人。皆、胡座をかいて座っている。

 中央の最も年老いた、すでに耳も二つ折りのような感じに垂れている老人が代表なのか、口を開く。


「まずは、礼を言おう。ジャック殿、同胞解放への協力、誠に感謝致す」


 代表の御礼に合わせ、五人の長老が皆、頭を下げた。


「いや、俺が到着したときにはすでに決着がついていた。その後の細々としたことに協力したに過ぎない、お礼をされるほどのことではないよ」


「いやいや、それでもだ。ありがとう」


「ふむ、まぁ、お礼は受け取っておこう」


 別に、意固地になって辞退することでもないので、俺はそう言ってこの話を終わらせた。


「それで、そちらのお嬢さんは、吸血人(ダンピール)であっているかな?」


「はい」


 長老たちの瞳は同情的だ。カーラの言う通り、森妖精たち全体にもその辺の理解があるのだろう。イジネたちだけではなかったようだ。


「ふむ……この(コロニー)でゆるりと休まれよ」


「ありがとうございます」


 コメントは控え、代表はカーラに休息することを勧めるだけだった。この辺りの気遣いは年の功といったところだろうか?

 カーラとの話に決着をつけ、代表が向き直ったのは俺であった。


「それで、ジャック殿」


「はい」


「失礼だが、お前さんは人間(ヒューマン)ではないな?」


 !?確信を持った言い方。俺は急なことで、取り繕うのが遅れた。代表の言葉が続く。


「お前さんは影を持っていない」


「……よく、お気づきで。魔術で認識を誘導しておいたのですが」


「なに、伊達に長く生きてはおらぬ、ふぉふぉふぉふぉ」


 和やかに笑う代表だが、俺の魔術は哲人石(ラピス)によって、過剰とも言えるブーストがかかっている。生半可な実力、例えば、ただ、歳をとっただけの奴に見破られるようなものじゃない。


 この爺さん、できるな。少なくとも、魔力の扱いはかなりのものだろう。


「ホ、ホントだ!いや、しかし、ジャックは神聖魔術(サクラメント)が使えたはず……」


 イジネの驚きの声が上がる。認識の誘導は意識されれば、簡単にバレる。

 イジネは、影がない人型種族など吸血鬼(ヴァンパイア)だけだが、正の魔力を扱うことに矛盾を感じて、俺の種族を測りかねてる様子だった。


「ふむ、神聖魔術を……。そのような吸血鬼は儂も知らぬな。お前さん、一体なんじゃ?」


 俺は、瞳に施している認識阻害の魔術を解除した。


「「「「「……!?」」」」」


 俺の瞳が確認できる五人の長老全員が息を飲んだ。やはり、この瞳は特別ということか。


「それは……紺碧(セイクリッド)()(アイズ)……」


 問い、ではないだろう。そもそも、俺はこれがなんなのかをイカロスの言葉でしか知らない。奴の蔵書に四神に関するものがあったが、奴の言っていた聖神と同一かもわからない。同一ならば、ソロモンも祝福を受けていたようだから、同じ瞳だった可能性もあるが……。


 気を取り直したらしい、長老たちがこちらに向き直る。代表が声を発した。


「その瞳は、魔術王ソロモンと同一だ。どういうことなのだ?」


 ふむ。では、聖神と四神は同一ということか。どういうことか、ね。俺が聞きたいくらいだが。

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