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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
32/139

到着!

 辺りが薄暗くなりはじめ、しばらくすれば空は茜色に染まり、森の中は一気に闇に覆われるだろう、そんな微妙な時間帯。


「着いたぞ」


 イジネの静かな声が響く。

 それを聞いて、もっとも嬉しそうにしているのは、やはり助けられた者たちだ。少し俯き気味だった顔を上げて、薄く笑顔を浮かべている。


 俺の目にも、(コロニー)の入り口だろう奇妙な曲がり方をした生きた木の門が見えた。おそらく、精霊魔法であのように成長させてあるのだろう。

 門の周囲は、茨で天然の柵が作られ、獣たちの侵入を阻んでいた。


 皆、もう少しだという気持ちで、軽い足取りで里に向かうなか、里のほうから近づく気配があった。それも一つや二つではない。もっとたくさんだ。


「「「「「イジネー!みんなー!」」」」」


 子供のように無邪気な声で、同胞を迎えようと、向こうから走ってきていたのは、二足歩行の犬や猫だった。


 なんだ、こいつら?真理眼(イデア)


犬妖精(クーシー):歩く犬の姿をした妖精族。好奇心旺盛で素直な性格の者が多い。成人しても人間(ヒューマン)の子供程度の背丈にしかならない。』


猫妖精(ケットシー):歩く猫の姿をした妖精族。好奇心旺盛で気まぐれな性格の者が多い。成人しても人間の子供程度の背丈にしかならない。』


 なるほど……。いろんな奴がいるな。


「お兄さん、あの子たち、真っ先にイジネさんの名前出しましたよ。すごく懐かれてるみたいですね」


 カーラが、顔をだらしなくさせながら、声だけは冷静にそう告げた。


「羨ましいという心が顔に出ているぞ」


「えっ!?そんな……!?」


 カーラは俺の指摘に、自分の顔を揉み解してなんとか真顔に戻そうと四苦八苦しはじめた。

 俺はそれを放置して、イジネに話しかける。


「イジネ、あの子たちは?」


「あぁ、里の住人だよ。匂いや足音に気づいたんだろう」


「ふむ」


 匂いや足音ってことは、犬、猫の特徴をそのままに持っているってことだろうか?


「みんな!帰ってきたぞー!」


「「「「「お帰りー!」」」」」


 イジネの言葉に、犬妖精と猫妖精たちは元気に声を返していた。


 ……。


 所変わって、すでに妖精たちの里の中、やはり森妖精(エルフ)たちがこの里の主体のようだが、犬妖精と猫妖精もけっこうな人数、住んでいるようだ。俺やカーラに対して、興味津々といった感じの視線を感じるが、そのほとんどが犬妖精と猫妖精によるものである。


「ジャック、とりあえず、ここにお肉を置いてくれ」


「あぁ、わかった」


 イジネに言われるまま、【念動(キネシス)】で浮かした森猪(フォレストボア)の肉を置く。そこはなんらかの獣の皮が敷かれており、砂が付着しないようになっていた。里の広場といった感じだから、住人がお肉を見て、気を利かせて置いたのだろうか?


「それじゃあ、まずは長老たちに挨拶にいく。ジャックとカーラは着いて来てくれ」


「あぁ」「はーい」


 俺とカーラが異種族のためか、長老への挨拶に着いて行くことになった。別に拒絶する意味はないので、了解して歩き出す。

 そんな俺たちの後ろからこんな会話が聞こえてきた。


「お肉だ!」

「大きい!」

「なんの肉だろ?」

「クンクン……森猪だ!」

「わーい!」

「今日は宴だー!」


 ほとんどが犬妖精と猫妖精だが、なかには森妖精の子供もいるようだった。


「酒が飲めるな!」

「そうだな!」

「「がははは!!」」


 一部、大人も混じっていたが……。


「「あんた!酒はほどほどにしとくれ!」」


「「はい……」」


 どうやら、奥さんに見つかったらしい。

 おぉ、怖……。

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