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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
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道中

「わぁ!セイちゃんの毛は気持ちいいねぇ」


 セイの毛並みを撫で回すカーラがうっとりとそう言った。


 俺たちは、イジネたちに誘われるままに、彼女らの(コロニー)に向かっていた。聞くところによると、森妖精(エルフ)たちはここハフル大森林の各地に散らばって暮らしており、隣り合う里同士での交流はあるものの国といった形態はとっていないらしい。


「なぁ、ジャック。厚かましいお願いなのだが、聞いてくれるか?」


 先程から俺の様子を伺っていたイジネが、やっと決意したのか話しかけてきた。


「なんだ?」


「……今回のようなことが、まだまだ起こっているらしい。ついては、同胞解放の手助けを人間(ヒューマン)側から行ってもらいたい」


 なるほど。


 すでに街にいる者を助けるのは容易ではないだろうからな。人間側の協力者が必要というわけだ。ふむ、まぁ、目的もないしな。


「構わんぞ。協力しよう」


「本当か!?」


 イジネはかなりの喜びようで、俺の肩を何度も揺すって激しく尋ね直してきた。


「良かった……」


 ようやく、実感が湧いたのか、10分ほどで解放してくれた。


 ……。


 ?生命感知に反応があり、そちらを見る。


「どうした?ジャック」


 隣のイジネが問いかけてきた。


「獣だ」


 俺は端的に答え、前に出る。


「?……!ジャック、疲れてるんだろう、私たちに任せてくれ」


 イジネも気づいたか、表情を引き締め、俺に声をかける。


「いや、さっきは言葉で解決しちまったからな。若干、鬱憤が溜まってるんだ、俺に譲ってくれ」


「なんだ、意外と好戦的だな。わかった。……聞いたな、お前たち!我々は周囲の警戒だ!いいな!」


「「「「「はい!」」」」」


 イジネはいい笑みを浮かべ、俺に譲ってくれた。


 やがて、気配の主が視界に入る。真理眼(イデア)


『個体名:No Name Lv.9

 分類:魔獣(ビースト)

 種族:森猪(フォレストボア)     』


『森猪:猪が魔力の影響を受けて、魔獣と化した魔化物(モンスター)。その巨体から繰り出される突進は、多くの低級冒険者の油断をひき潰してきた。』


 ふむ、雑魚だな。


 俺はそのデカいだけの猪をよく引きつけて魔術を行使。


 魔力操作(マナ・コントロール)・派生技術【障壁(ウォール)


 魔力でつくった透明で薄く紫色の壁は、森猪の突進を受け止めていた。タタラを踏み、自身の突進で自爆し、軽い脳震盪を起こしている森猪に近づき、心臓に近い位置に手を添える。


 心霊魔術(サイキック)握心(グリップ・ハート)


 霊体(アストラル)の心臓を握り潰し、現実の肉体に心臓発作を引き起こさせた。森猪は痙攣し、しばらくすると倒れた。


「お兄さん、すごーい!」


 あっさりと終わった狩りに、森妖精たちは呆然としていたが、俺の正体を知るカーラが無邪気に称賛しながら近づいてくる。


「解体は?」


「できんな。カーラはできるか?」


「できるよ!ナイフある?」


 俺は小袋にテキトーに詰め込んでいた鋼鉄のナイフを渡した。因みにこれは、ミノさんの鋼の大斧を錬金魔術(アルケミー)の練習に使って作った物だ。


「あ、そうだ。お兄さん、血抜きやって」


「じゃあ、出口をつくれ」


 そう言うと、カーラは慣れた手つきで森猪の首元を切り裂く。


 血魔法【血液操作】


 別に【念動(キネシス)】でもできることなので、吸血鬼(ヴァンパイア)だとバレたりはしない。


 血は小袋から取り出した空き瓶に詰めておいた。


「ふむ、まるで吸血鬼のようだな」


 近づいて来ていたイジネの言葉だ。


「あぁ、故郷でもこの顔と合わせて、散々からかわれたよ」


「そうか、ふふふ」


 俺の言葉に怪しんだ様子もなく、イジネは笑った。


「ああ!お兄さん、自意識過剰だー!自分がイケメンだって暗に言った!」


「事実だろう」


「ブー、そうだけどさー」


「はははは!良いじゃないか。ジャックは私から見ても、綺麗な顔をしているよ」


 カーラのからかいを軽くあしらい、それをイジネが笑った。


 ふむ、イジネは最初の印象よりか、大分、気安いな。

 俺は心のなかでイジネの印象をそう、修正しておいた。

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