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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
3/139

強敵

 ヒタヒタという気分で、散歩を続けている。

 どうやら、この辺りには骨鬼(スケルトン)しかいないようで、安心して歩ける。


 すでに死体のためか、疲労は無い。精神的にも負担がないので、時間感覚もなく、歩き続けている。


 遭遇した骨鬼は、片っ端から討伐しているので、レベルは5となった。骨鬼のレベルにもバラつきはあるが、5を超える個体は見ていないので、これで万が一にも負けることはないだろう。


 どうやら、俺の種族は、屍霊(リビングデッド)のなかでも強い種族なのだろう。ただ、屍鬼(ゾンビ)の亜種と説明されるので、低位のものの中では、ということだろうが。


 しかし、広い迷宮(ダンジョン)である。ここは、第一階層のようで、先ほど入り口が確認できた。俺は、不朽の呪いのせいで、外に出ることができないので、外が森であることを確認した後、そそくさと迷宮探索に戻った。


「ふむ、行き止まりか」


 当てもないので、当てずっぽうで歩いていたが、どうやら先ほどの分岐路を間違えたらしい。残っているのは、そこの選ばなかった道だけなのでどちらにしろ、これで探索はひと段落だろうか。


 さて、気を取り直して行きますか。俺は元来た道を戻り、最後の道をそのまま歩いていった。


「………」


 最後の道の先にあったのは広間であり、俺はその少し前で止まっていた。

 その広間には、骨鬼がいた。しかし、今までの骨鬼のように無手ではない。錆び付いた剣を握っていた。


 真理眼(イデア)を行使。


『個体名:No Name Lv.10

 分類:屍霊

 種族:骨鬼       』


 種族は変わらない。ただ、レベルが10。今までの最高レベルだ。単純に考えて、俺との差は二倍。種族の違いを考えても、ギリギリだろうか。


 だが、奴の背後には階段が見える。ここを突破するしかない。


 さながら、ゲームの階層主(エリア・ボス)である。

 

「フー」


 最早、死体となっては必要のない深呼吸を一つ。俺は、階層主に向けて、突進した。


 すると、今まで動きのなかった奴が動く。先ほどまでの雑魚とは大違い。奴は、待ちの姿勢で防御のためか、剣を構えている。


 それに、若干の躊躇いを思いつつも、俺は奴の背後に周りこもうとした。


 斬


 俺の顔すれすれを、潰れた刃が通っていった。こちらにダメージはない。だが、奴は俺のスピードについて来た。背後は取れない。


 思考は、一瞬の隙。だが、奴にはそれで充分だ。

 奴は、今度は果敢に攻めかかり、俺は、回避に専念する羽目になった。


「……」

「……」


 互いに無言。奴はそもそも声帯がなく、俺は無口だ。故の沈黙はどちらかというと俺の精神に影響を与えて、状況を不利にしている。焦りがあった。


 徐々に、避け損ねた刃が、俺の髪や服を斬り、遂には身体に到達した。

 傷口からは、どろりとした黒い粘液状のおそらく血液が出てきた。それはすぐに固まって傷を塞ぐ。どうやら、死体であるのであまり、小さな傷は意味をなさないらしい。


 ふむ。

 俺にとって、それは一種の安定剤の役割を果たしてくれた。多少の傷が無意味ならば、そこまで焦る必要もないだろうと。


 冷静さを取り戻した俺は、奴の剣筋をじっくりと観察し、着実に避けていく。

 お互いに屍霊だ。疲労は無い。生前の感覚を残す俺は、焦りがあって動きが鈍ったがそれがなくなれば、条件は五分。いや、種族の強みの分、俺のほうが有利ですらある。さらに、しっかりとした自我のおかげで学習ができるのだ。負ける要素はなかった。


「……」

「……そろそろか」


 体感で数時間ほど。俺はひたすらに剣を避け続けた。最早、目をつぶっていても、避けられるほどに慣れた。


 奴の横薙ぎの剣とともに、俺は奴の懐に潜り込む。

 慌てることなく、奴は剣を引き戻そうとしているが、遅い。


 俺の拳は、正確に奴の頭蓋骨を叩きつけた。

 奴の動きが止まり、淡く黒に光るおそらく、魔力が俺のほうに漂って来た。

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