お誘い
魔力操作・派生技術【念話】
俺は、カーラとの間に魔力線を繋ぎ、【念話】を行使、思念だけで会話できるようにする。ちなみに伝える意思がなければ伝わらない。
『カーラ、聞こえるか?』
「うわ!?なになに?」
『聞こえてるようだな。これは【念話】だ』
『あっ!なるほど、お兄さん、魔術師なんだ』
どうやら魔術の知識があったらしいカーラは、すんなりと受け入れ、思念で会話する。
『俺がどんな吸血鬼だと感じ取れる?』
『ん?どういうこと?吸血鬼は吸血鬼でしょ?』
どうやら俺が異常個体であるとはわからないらしい。
『違うな、俺は吸血聖人という異常個体だ。でなきゃ、神聖魔術を使えるわけがないだろう』
『あっ、そっか、確かに。へぇ、じゃあ、お兄さんって吸血衝動はどうなってるの?』
『血を吸わなきゃ、生きられないということはないし、衝動も抑えられる』
『そっか……私と一緒だね!』
なにやら、少し暗い雰囲気を漂わせたあと、カーラは気を取り直すように思念に張りを持たせた。
『そうなのか……吸血人も……』
「ジャック!」
俺が何か言おうと思念を送りかけたところで、イジネの呼び声が聞こえた。思念を中断して、そちらを向く。
「イジネ、どうした?」
「いや、ありがとう。首輪を外してくれて。ついては、お礼がしたいから里まで来てくれないか?森で迷っていたようだし、疲れてもいるんだろう?」
「わかった」
「そうか、良かった!……うん?そちらは一緒に捕まっていた子か?」
「あぁ、そうなんだ、この子は……」
俺がカーラをどう紹介しようかと口籠るとカーラが前に出た。
「カーラ・ブラッドローズです」
「ブラッド……?失礼だが、もしや」
「はい、吸血人です」
カーラはあっさりと自身の素性を明かした。
『おい、良いのか?』
『うん、森妖精はその辺り理解があるよ』
まだ、繋げていた【念話】で問いかけるとそんな回答がなされた。
「そうか。人間は未だに君たちを蔑んでいるのか。忌み子どころか、率先して怪物を殺してくれる良き隣人であるというのに」
「仕方ないよ、一番襲われるのは人間なんだから!」
カーラのことは正しいらしく、イジネは同情的な言葉を発した。カーラはそれにわざとらしく元気に応対していた。