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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
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カーラ

 神聖魔術(サクラメント)鎮魂火(レクイエム・ブレイズ)


 俺は、イジネに許可をもらい、護衛の死体を弔った。イジネたち、森妖精(エルフ)はこの殺害について同胞のため仕方なくという気持ちだったらしく、この弔いに拒絶の反応は示さなかった。むしろ、感謝されたくらいだ。


 ちなみに、彼らの財布は貰っておいた。現金がなかったのでちょうど良かったのだ。換金できそうな物はあるんだが、街に入るときに通行料が掛かるとかなると不便だしな。

 真理眼(イデア)で見るに、貨幣単位はエル。鉄貨1エルから、半銅貨10エル、銅貨100エル、半銀貨1000エル、銀貨1万エル、金貨10万エル、白金貨100万エルの七種類の十進法のようだ。


「ふむ、見事なものだ」


「そうか?」


「あぁ」


 イジネが隣に立って、燃え上がる青白い弔い火を眺めている。炎でできた陰影がイジネの美貌に憂いを落としているようだった。


「イジネさん!」


「どうした?」


 同胞を解放していた若い男の森妖精がイジネを呼ぶ。


「実は、鉄格子は簡単に壊せたんですが、既に首輪が嵌っていました。それが魔道具らしく、どうやっても外せないんです」


 ふむ?魔道具か。俺はすでに外に出ている者の一人に目をやり、首輪を真理眼で見た。


『隷呪の首輪:契約魔術【強制(ギアス)()隷属(スレイブ)】の付与された首輪。これを嵌められた者は、主人に設定された者に逆らえなくなる。』


 契約魔術は確か、召喚魔術(レメゲトン)の派生魔術だったな。「召喚魔術理論分解」で時空魔術とともに出てきた。


「イジネ」


「なんだ?」


「あの首輪なら、俺が解除できる」


 俺の言葉に、イジネは驚きを表し、次いで真剣な表情で言葉を発した。


「頼む」

「ああ」


 即答して、手近な者に近づく。


 神聖魔術【解呪(ディスペル)


 なんの抵抗もなく、首輪が外れ、地面に落ちる。その首輪が嵌っていた少女は呆然としたあと、その現実を把握したのか、ワッと泣き出した。その子を周りの森妖精に任せて、次の子のもとに行く。その間にセイに話しかける。


「お前も手伝え、あっちからやってくれ」


「チッ!」


 了解の一鳴きとともに、右肩を飛び降り、俺の示したほうに駆ける。すぐに神聖魔法の光が灯った。

 それを確認して、俺も作業を再開する。


 ……。


「お前で最後だな」


 そう言って、一人だけ黒髪黒目の少女に話しかける。首輪の影響か、返事はないが喜んでいると思う。顔はなんというか、元気っ子的な顔だ。綺麗というより可愛いと言われるタイプ。


 神聖魔術【解呪】


 首輪が外れる。少女は首元を確認したあと、俺を見てニッコリと微笑み


「ありがとう、お兄さん!」


 勢いよく抱きついてきた。


「うお!?」


 俺は吸血聖人(ヴァンパイア・ホープ)の身体能力でなんとか踏み止まり、少女を受け止める。


「私、カーラ・ブラッドローズ。よろしくね!」


 少女、カーラは抱きついたまま、また、ニッコリと微笑む。そして、俺の耳元に口を近づけ……


「お兄さんが、吸血鬼(ヴァンパイア)なのは、内緒にしたげる」


 悪戯っ子のように、そう囁いてきた。


 !?


 俺はすぐにカーラを真理眼で見た。


『個体名:カーラ・ブラッドローズ Lv.13

 分類:人類(プライミッツ)

 種族:吸血人(ダンピール)            』


『吸血人:吸血鬼の母と人間(ヒューマン)の父のもとに産まれる混血児(ハーフ)。吸血鬼を感知し、吸血鬼を殺すチカラを持つ。再生能力を持ち寿命が長く、朝に弱い。』


 それは向こうの世界の物語で、忌み子と設定されることの多い禁断の愛の結晶。カーラは生粋の吸血鬼狩ヴァンパイア・ハンター、吸血人だった。

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