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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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魔術王の功績

『魔術には、主に七つの体系がある。

神聖魔術(サクラメント)死霊魔術(ネクロマンシー)精霊魔術(シャーマニズム)錬金魔術(アルケミー)心霊魔術(サイキック)占星魔術(アストロロギア)召喚魔術(レメゲトン)の七つだ。

 これら七つの魔術体系は、(いにしえ)よりも遥か昔、未だ世界にあの天使族と悪魔族がいた時代、一人の男によって体系化された。そうだ。この本を読む者がどんな者であろうと一度くらいは聞いたことがあるであろう。その男の名は、魔術王ソロモン。放浪の民のもとに産まれた正真正銘の大天才、四神すべてに祝福された者である。』


 愛剣を自在に操る遊……んん、もとい、訓練を終えて、俺は再び、「魔術入門」の文字を追っていた。


 ……ソロモンか。向こうの世界にも実在したと言われる人物だ。紀元前の第三代イスラエル王、神に叡智を願った、生まれながらの王。まぁ、同一人物ではないだろう。おそらく、転生者がそう、名乗ったんだ。


『ソロモンが産まれる以前は、人間(ヒューマン)が神秘を操ることなどできなかった。それまでは、魂に術式が刻まれ、本能的にそれを行使できる異種族たちの魔法使いだけが神秘を行使していた。

 ソロモンが、放浪の民のもとに産まれたのは、我ら人間にとって、四神に感謝すべき幸運だ。放浪の暮らしのなかでソロモンは、異種族たちと交流を持ち、「気まぐれな隣人」とも呼ばれる四種族から魔法を学び、そこから七つの魔術体系をつくりあげる。

 天使族からは正の魔力による神聖魔術を、悪魔族からは負の魔力による死霊魔術を、森妖精(エルフ)から世界の意思たる精霊と交信する精霊魔術を、山妖精(ドワーフ)からは物質を意のままに造り変える錬金魔術をそれぞれ学んだ。この四つの魔術体系を四大元素フォース・アーキタイプと呼ぶ。そして、その四つの魔術体系から、ソロモンは新たに三つの魔術体系、すなわち、心霊魔術、占星魔術、召喚魔術をつくりあげる。この三つを三大偉業トライ・アチーブメントと呼ぶのだ。』


 四大元素に三大偉業ねぇ。てか、森妖精と山妖精は、やっぱいるのな。ミノさんを見るに、獣人もいるんだろうし、ファンタジーだわぁ。天使族と悪魔族は書き方からして、今はいないのかね。


 俺は、区切りのついた本から視線を逸らし、何とは無しにあたりを見渡す。


 お?……鏡だ。そういや、俺って映るのかね?


 休憩がてら、鏡を覗き込む。机の上で丸くなっていたセイも一緒に覗き込んだ。


「チッ?」


「ほぉ……」


 セイは、鏡に映る自身の姿に不思議そうな視線を向けており、匂いを嗅いだり、触ってみたりしている。


 俺はといえば、自身の姿に感嘆の吐息を漏らしていた。

 吸血鬼(ヴァンパイア)は総じて、美形らしいことが真理眼(イデア)でわかっているが、俺のそれもその例に漏れてはいなかった。生前からそうなのか、進化によって、そうなったのかはわからないが……。


 濡れ鴉のような艶かしい黒髪に、紺碧色の瞳。白皙に、アクセントを添える鮮やかな紅色の唇。もちろん、色合いだけじゃない。切れ長でありながら、優しげな目元、唇は薄く弧を描き、常に微笑を浮かべているかのようである。スッと通った鼻筋にシャープな顎、芸術品のようなそれらのパーツは黄金比によって配置されている。惜しむべきは、俺が中背であることだろうか……。


 長身だったら、より完璧だったろう……。

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