新たな種族
「チッ!」
嬉しげなセイが一目散に俺のもとに駆けてつけてくる。最後の仕上げに飛び付いてくる相棒を俺は抱きとめてやった。
「勝ったな」
「チッ♪」
勝利の余韻に浸りながら、セイを撫でてやる。
お?……おぉ!セイの滑らかな毛並みがわかる!
クンクン……セイの爽やかな匂いもする。まさか、五感が戻ったか!
……。
一頻り、ジャレ合い満足すると、セイは動かなくなった屍に向かい、食事を始めた。
さて、真理眼行使。
『個体名:ジャック・ネームレス Lv.25
分類:不死者 人類
種族:吸血聖人 』
『吸血聖人:吸血鬼でありながら、負の生命でありながら、その身に正の魔力を宿すことのできる異常個体。現状では、世界に一体しか存在しない新たな種族。吸血衝動は、吸血鬼の存在そのものであるため失われてはいないが、生きるうえでは血を吸う必要性はない。』
『個体名:セイ Lv.14
分類:魔獣
種族:聖鼠 』
『聖鼠:清鼠系統、進化二段階目の種族。今まで、浄化に限定されていたチカラが、神聖魔法という新たなカタチとなっている。』
俺も大概だが、セイも一段飛ばしで進化してやがる……。まぁ、名称的に俺の影響か。てか、テキトーに名乗った名が個体名になってやがる……。
よく見れば、セイの毛色が白ではなく、青白い。その瞳も赤から碧に変わっていた。
さて、特性は、と……
『特性
・生命感知:生命力そのものを第六感で感知する。
・呪毒病魔:その身に宿す負の魔力によって、生者に対しての攻撃に病毒の呪いを宿す。
・無限の胃袋:いくらでも喰らうことができる。
・血魔法:吸血鬼系統が本能的に行使する神秘。血を媒介にして、事象を引き起こす。
・変幻自在:吸血鬼は、狼、蝙蝠、霧の因子を持ち、その範囲内ならば、変身も分身も自在である。
・超再生:血のチカラで瞬時に再生する。骨肉を喰べても血のチカラに変わるが、変換には時間が掛かる。核が消滅しなければ、生き続ける。
・不老の祝福:身体が老いることはない。また、月光のもとではチカラが向上する。
・聖なる魅了:吸血鬼はその美貌とは別に、魅了の魔力を放っているが、吸血聖人は正の魔力を宿すためか、魅了とともに善人の印象を他者に抱かせる。
・混沌の器:負の生命でありながら、正も負も併せて蓄えることができる特殊な魔力貯臓。
固有特性:哲学者
・真理眼: ありとあらゆるものを見ることができる。どのような隠蔽をも看破する。
・哲人石: およそ、人が抱えるすべての欠陥を解決する万能の媒体。錬金魔術においては、最高の触媒ともなり得る。
・[封印]
・[封印] 』
……ふむ。いくつか、消えている特性があるな。不朽の呪いは、不老の祝福に取って代わり、鋭牙尖爪や喰再生はそれぞれ、変幻自在と超再生に含まれたのか。
固有特性にも哲人石が増えている。イカロスとの戦いの最後を思うに、永久機関的な効果があるのは確定か。
しかし、これでようやく、外に出られるな。