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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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相棒

『クククク……なんだ、その顔は?ワタシに勝てると本気で思っていたのかね?……勝てる!わけが!無いだろう!ワタシは、死霊王(リッチ)屍霊(リビングデッド)の王だぞ!』


 俺の苦戦の様子に、調子を取り戻したのか、高らかに叫ぶイカロス。


 ウザい。


 てか、お前の種族は死霊(デッド・ドール)の王であって、屍霊の王じゃねぇよ。魔人形(ゴーレム)に囲まれて寂しく、孤独に過ごす哀れな死者だ。


 自惚れ屋らしいイカロスは、俺にとどめも刺さずにペラペラとお喋りを続けている。おかげで、色々と考えることができる。


 しかし、どうするか。一気に片付けたいところだが、死霊魔術(ネクロマンシー)のおかげで大して数が減らない。自分で天才だと言う程度には、魔術行使も早い。近づいたときの反応も、近づけていないから分からない。


 ……。


 クソッ!手詰まりなのか?


「チッ」


 思考の坩堝に沈むなか、セイの鳴き声が俺を現実に引き戻す。


「チッチッ」


 すでに、地に伏したままの屍を視線で示しながら、セイが鳴く。

 僕に任せろとでも言っているのだろう。魂の繋がりでも、そのように感じ取れる。


 ……待てよ?魂の繋がり、セイの浄化……


 綱渡りになるが、これが嵌れば、勝てる。


「セイ」


 俺の言葉にセイは最初、拒絶の意を示したが、根気強い説得に最後には折れてくれた。


「いくぞ」


「チッ」


 ドン!


 一息に踏み込んだ。


『何度来ようと同じことよォオオ!!』


 イカロスの叫びを聞き流し、魂の繋がりを意識する。


 ……。


 ある。セイのチカラ。

 清浄な、俺の負とは異なるそれ。


「チッ……」


 セイが、葛藤の声を上げながらも、集中する。


 感ぜられるセイのチカラが、こちらに流れてこようとする。だが、主人を傷つけかねないそれに魂の繋がりは、その流れを堰き止めにかかる。


 良いんだ、それで。


 俺は自ら、それを掴み取るイメージを強固に意識する。


 ……。


 来た。清浄なる正の魔力が、浄化という方向性を持って、俺の身体に満ちてゆく。


「グァアァァァアアア!!!!」


『くはははは!!自爆するとは、自棄になったか。そのまま、滅せられるがいい!』


 イカロスの嘲笑が耳に障る。

 久しく感じていない痛みを、無理矢理押さえ込み、綻ぶ身体を喰再生で修復する。


「ダァアア!」


 気合の咆哮とともに、剣を一閃。

 溢れ出る浄化のチカラを纏い、愛剣が死霊を斬り裂く。斬られたそれは、ただの屍に成り果てて、再び動くことはない。


 一体、二体、三体……


 思惑は成功した。セイのチカラは、しっかりと俺に絡みつき、斬り裂く死霊を浄化していく。


 だが


「グッ……」


 イカロスにたどり着く前に、身体が軋んだ。


『クククク……いやはや、素晴らしい、胆力だった。ワタシではそんなことはできんだろう。だが、ここまでだ』


 イカロスの余裕ゆえの賞賛の声が聞こえる。


「チッチッ!?」


 セイの焦りの声がやけに響いた。それでも、俺は……勝つた……め……に……


 バキン!


 意識を失う俺の耳に、何かが砕ける音が聞こえた。


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