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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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邂逅

「チッ♪」


 ご機嫌な様子で、セイがミノさんに齧り付いた。


 相変わらずだな。そんなことを思いながら、レベルを確認する。……20か。進化はなし。


 ふむ。ここで成長がストップとかないよな?


 ……まぁ、その辺は考えても仕方ないか。で、この大斧はなんだ?


『鋼の大斧:なんの変哲もない鋼の大斧。とても重いため、木樵には向かない。』


 いらんな。


 ……。


 あっさり終わったから、こんだけかって感じがするな。しかし、そろそろ外に出たいところだなぁ、やっぱ次の進化に期待するしかないかぁ。


「ケプッ……」


 ミノさんを平らげたセイがゲップを一つ。ゴロンと横になっていた。


「セイ、いくぞ」


「チッチッ」


 あとちょっととばかしに、セイは前足をぶらぶらさせた。


 全く仕方ない奴だ。


「チッ?」


 俺は自分から動かないセイを拾い上げ、スタスタと階段を降りていった。ふむ、やっぱ靴はいいな。


 ……。


 第三階層は、どこか神殿のような荘厳さを放つ石造りであった。第一階層も石造りであったが、そちらはなんというか荒削りな印象を受けたが、こちらは光沢を放つほど綺麗に磨かれている。


 俺たちが今歩いている通路には、等間隔に松明が設置され、妖しげな紫炎を揺らめかせていた。


 ……しかし、長い。入り口からずっとこの通路を歩いている。敵には遭遇していない。たぶん、ここが最下層なんだろう。あとは、迷宮主(ダンジョン・マスター)が待つばかりというわけだ。


「チッ」


 セイも心なしか緊張したように鳴く。

 俺はセイの頭を撫でてやった。


「チッチッチッ♪」


 セイはもっととばかりに、頭を擦り付けてくる。


 ……。迷宮主か。会話をこなせる奴ならいいんだが。それならば、俺の状況に対する多少の疑問が解決するはずだ。


 俺の死、記憶、この世界のこと。俺は知らないことが多すぎる。


「チッ」


「ん?」


 セイの声に、黙考を中断。前方に意識を向けた。


 扉だ。両開きの大扉。まるで地獄の入り口かのように、苦悶の表情を浮かべ、必死に手を差し伸べる亡者たちの装飾がなされている。


「チッ?」


「あぁ、行こう」


 臆してはいけない。思い切りよく、行動しよう。考えるのはそのあとでいい。


 前世の俺はたぶん、考えるだけで行動しなかったから死んだんだ。


 ギィィとゆっくり、俺の手に押され、右側の扉が開いていく。空いた隙間から、漂いでるのは、白い煙。それよりも、はっきりと感じられる濃厚な邪気、負の魔力。


 俺は扉のうちへと足を進める。


 扉から3歩ほどの距離。空間を震わせる声が響いた。


『ようこそ、遅かったね。待ちくたびれたよ』


 声の主を探せば、奥に紫の光を見つけた。それを宿す頭蓋骨もすぐに見えた。

 その周囲には、それを守るかのように佇む死者の軍団。


「あぁ、それはすまない。ところで、俺を殺したのはお前か?」


 自然と言葉が溢れた。


 ボロ切れのようなローブを纏い、赤黒く染まった大杖を握る骸骨。それはカタカタと震えて、笑った。


『クククク……クハ、クァーハハハ!!!』


 堪えきれなくなったか、大袈裟に天を仰いで盛大に笑い上げた。

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