ミノさん……
第二階層後半の探索を続けて、俺のレベルは18になった。その後、遭遇した魔化物のなかには、喰屍鬼や武骨鬼、魔骨鬼といった屍鬼や骨鬼の上位種がいた。
奴らは、進化で多少の知恵を得ているのか、徒党を組み、集団で襲いかかってきた。骨に関しては、連携までしていた始末である。
基礎スペック的に、こちらが強いため、負けることはないのだが、どうにも面倒であった。
しかし、そんな第二階層ともそろそろ、おさらばである。今回は運良く、当たりを引いたのか、すでに奥に階段の見える広間の前まで来ていた。
今回の階層主はすでに見えている。中背の俺の二倍の体躯。鍛え抜かれ、くっきりと割れた腹筋をはじめとした強靭な筋肉。その姿に似合う大斧を握り、死者の濁った目を宿すそいつの頭部は、猛牛のそれ。
そう、もうお分かりだろう。迷宮と言えば、このヒト。
ミノさんである。
真理眼で確認すると、こうなっている。
『個体名:No Name Lv.20
分類:屍霊
種族:牛人屍鬼 』
『牛人屍鬼:牛人の死体に負の魔力が溜まり、屍霊と化した魔化物。人間以外の人類の死体が屍霊になることは滅多になく、なってしまった場合は生前の特徴を引き継ぎ、通常の屍霊よりも強力な存在になる。』
うん、まぁ、原典のギリシャ神話では確か、アステリオスという名を与えられた個人であるが、ここにいるミノさんは関係無いだろう。そもそも、あれは死者じゃないし。
さて、やりますか。
「セイ」
「チッ」
開始の合図は、セイの浄化である。
青白い光がミノさんに一直線に、放たれる。
「ブゥモーー!!!?!」
ミノさんは、それをもろに喰らい、悶絶する。
ダン!
と踏み込み、ミノさんの背後に周る。無防備な背中に一閃。
隕鉄の刃は、強靭なはずのミノさんの皮を斬り裂き、肉を断つ。
「ブゥボー!!!」
屍霊に気合があるのかどうかは知らないが、雄叫びを上げて、立ち直ったミノさんが大斧を振るう。
俺はそれを横っ飛びにして躱す。
ドゴン!
凄まじい音がして、そちらを向けば、さっきまで俺のいた場所に、クレーターができていた。凄まじい膂力だ。
人間の身体がベースの俺ではいくらなんでもあんな威力は出せない。
「ブゥルル……」
ほとんど、獣と変わらない所作で逃した獲物である俺を睨みつけるミノさん。
「ミノさん、はっきり言おう。アンタを倒すのは、簡単だ」
「ブゥモボラァアアアアア!!!!」
挑発を感じたのか、ただ、単に生者への怨みを爆発させたのかは知らんが、ミノさんは闘牛ばりの突進でこちらに突っ込んできた。
「セイ」
無慈悲な俺の声に、ミノさんにまたもや浄化の光が着弾。
「ブゥモーー!!?!」
ミノさんはのたうち回り、俺は悠々と近づいて、そのそっ首を斬り落とした。
ふむ、これは最初の様子見も必要なかったか?まぁ、いいか。安全第一ということで。




